兵庫県庁内部の混乱について、現役職員が関西テレビの独自取材に応じました。

【現職の兵庫県職員】「知事の話題にならない日がないですし、やっぱり朝仕事に来たらその話題ばっかりです」

今回、関西テレビの取材に応じたのは、兵庫県の現役職員。

連日、新たな問題が浮上する事態となっている斎藤知事のパワハラ疑惑で、業務にも影響が出ているといいます。

【現役の兵庫県職員】「ある程度、中長期的に考えながらやっていかないといけない仕事が多々あるんですが、それが決められない状況ですね。知事が任期満了までいるのかいないのか、分かりませんし。例えば会議ひとつとったとしても、予定が立てられない状況ですので、何も進められないというのが実情だと思います」

■ことの発端は

ことの発端はことし3月、元西播磨県民局長(60)が、斎藤知事のパワハラや物品をねだった疑惑などを告発する文書を一部の報道機関などに配布しました。

それに対し、知事は当時…

【斎藤元彦・兵庫県知事】「事実無根の内容が多々含まれている。業務時間中に嘘八百含めて、文書を作って流す行為は公務員として失格です」

この会見などを受け、元県民局長は県庁内に設置された窓口に公益通報したものの、ことし5月に告発文は「核心的な部分が事実でない」として停職3カ月の懲戒処分を受けました。

しかしその後、一部の疑惑が事実だったことが判明。

告発を調査するための百条委員会が設置されましたが、今月7日、元県民局長が死亡しているのが見つかりました。自殺と見られます。

元県民局長は「死をもって抗議する」という主旨のメッセージとともに、斎藤知事が上郡町の特産品のワインを求めた発言とみられる音声データを残していました。

【斉藤知事とみられる音声】「ワイン、私飲んでないので、ぜひまた。この間、いちごと…塩はあれですけど…折を見て、よろしくお願いします」

知事は、先週ワインの受け取りについて認め、当初は完全否定していた様々な疑惑が事実だったと判明する事態に。

■斎藤知事は「続投」の意思

県民、県職員、そして支援を受けていた身内の自民党からも辞任を迫られる事態となっていますが、斎藤知事本人は「続投」の意思を強調し続けています。

24日の会見でも…

【斎藤知事】「県職員との信頼関係の再構築、そして県政を立て直して行くことが私の果たすべき責任だと考えている」

これまでも答えてきた発言を24日も繰り返した斎藤知事。

また、目立ったのはこの言葉でした。

【斎藤知事】「こういった状況でも、県職員の皆さんが懸命に業務に取り組んで頂いているのは、本当に感謝申し上げたい」「これは職員の皆様にも感謝」「まずは今すべきところは日々の業務をしっかりやっていく。県職員の皆様にも心から感謝を申し上げたい」

県職員に対する「感謝」を何度も強調しました。

■問題発覚以降の知事の対応を職員はどう見ているのか

問題発覚以降の知事の対応を県職員たちはどう見ているのか…
現場の生々しいやり取りを現役職員が明かしました。

【現役の兵庫県職員】正直(斎藤知事は)何も語ってくれないなとか、同じことしか言わないなとか、腑に落ちるような答えは何もなかったなとか、先週から進歩していないよねとかそういった感じですね」

【現役の兵庫県職員】「正直に言うと、知事はいつ辞めるんだろうって、皆カウントダウンをしているような状況だと思います」

【現役の兵庫県職員】(Q県職員との信頼を回復することはできると思う?)「元々ないので回復も何もないと思います。元々信頼関係があったかというと、多分なかったと思いますので。元々就任直後くらいから皆さん違和感を感じながら、仕事をしていたと思いますので、頑張る頑張ると言われても、どこをどういう風に頑張るんだという具体的な話がないと、説得力に欠けるかなと思います」

■人事課が配布した資料に物議が

そして、県職員の声から真相究明が期待されるのが、百条委員会です。

今後、委員会では全職員9700人へのアンケート調査や関係者の証人尋問が予定されています。

しかし今、その運用についても問題が浮上しているのです。

百条委員会の調査を受ける県の職員向けに、人事課が配布した資料。

そこには…「委員会から、職務上の秘密又は職務上知り得た秘密が含まれる事項について出頭又は出席の請求があった職員は、守秘義務免除の申請手続きを行う」

百条委員会に出頭して証言する職員は、「職務上の秘密」について話す場合、「所属部署で事前に承認をもらう必要がある」という県の内規を知らせる文書が届いたのです。

【現役の兵庫県職員】「(百条)委員からどのような質問がされるか分からない中で、事実上できないと思います。職員に余計なことを話させないようにする為の手続きを作り上げたのではないかなと思います。

人事課はこのルールについて、あくまでも「職員を守るため」と説明していますが、百条委員会からも批判の声が上がっています。

【ひょうご県民連合 竹内英明県議】「これあり得ないですよね。当委員会への調査に形をかえた人事当局からの調査妨害と言っても過言ではありません」

この点について、斎藤知事は…

【斎藤元彦知事】「人事課が百条委に関して職員の立場、気持ちをできるだけ負担を軽減する観点から、いろんなことを考えてるということだと思います。百条委員会からの指摘は真摯に受け止めた方がいいと思うので、それを踏まえてできるだけ職員の負担とならない方法を検討していくべき」

当初、告発文は「事実無根」だとして元県民局長を処分し、真実を明らかにするための百条委員会での証言についても疑問が残る県の運用。

県民や県職員の信頼を回復できる日はいつになるのでしょうか。

■取材を続けてきた記者が解説

関西テレビでは、亡くなった元県民局長に直接取材を続けてきました神戸支局の松浦記者とともにお伝えしていきます。

【田村淳さん】「ここまで県の職員との信頼関係が崩れていて、それを兵庫県民の方との信頼関係をクリアにする意味でも、もう一回選挙という形でその意見を聞くように、なぜすぐに切り替えられないんだろうなと思って」

【田村淳さん】「元明石市長の泉さんはパワハラ問題ありましたけど、すぐに続けていいかどうかっていう辞職してまた選挙するという選択を取ったじゃないですか。なので本当に県民のことを思ってるのであれば、それぐらいのジャッジをしてもいいタイミングじゃないかなと思うんですけど。残ることが県民のためだと思うその理由をちゃんと聞かせてほしいですけどね」

【吉原キャスター】「県民の負託を受けていると言うことを繰り返し話す斎藤知事ですが、元幹部職員の方は取材を続けている中でどういった思いだったのででしょうか?」

【松浦武司記者】「元県民局長の方に、先月下旬に私たちの取材班がお話を伺いました。斎藤知事の県政の運営方針に問題意識を持っているということでした。元局長によると、知事は議会やその職員の方と充分にコミュニケーションができてない状態でも、強引に政策を進めていくところがあると。このまま続けば今後の県民や残る後輩にとってよくないのではないかと思って告発をしたとお話されていました」

■なぜ県の公益通報窓口を最初に使わなかったのか

【吉原キャスター】「告発された方は、内部告発もしているんですけど、まず最初にしたのは報道機関などへの外部告発ということになりました。なぜ外部通報をしたのでしょうか?」

【松浦武司記者】「県の内部に公益通報窓口がありますが、最初に使わなかったんですね。なぜかと聞いたんですけれども、今回、県のトップに関する告発であって、県の内部の組織に相談するのが本当にいいのかどうか、その中で公正な調査が行われるのかまあ少し疑問が残るというふうにお話していました。その中で一番最初に選んだのが、3月に外部の報道機関に告発するという方法を選んだと話していました」

【安藤優子さん】「公益通報は、外部に対して情報を告発することも含まれていると私は理解しているのでですが、まずメディアに告発をしたというのはいろんなこう状況を考えて一番効果的であろうというふうにお考えになったんじゃないかというふうに思うんですね。でも、結局『嘘八百』という一言で片づけられてしまって、情報やその告発の内容を精査するまでもなく、片付けたっていうこと自体が、やっぱりこの内部告発をした人間の意思とか気持ちをもう思いっきり踏みつぶしたわけですよね。私は、内部告発者を守れないっていうところが、今回問題にしなくてはいけない構図だというふうに思います」

■現在の県庁の中の雰囲気は

【吉原キャスター】「連日このニュースをお伝えしている中で、県庁で働いていらっしゃる皆さんはどう思っているのか、県庁の中の雰囲気はどうなんでしょうか」

【松浦武司記者】「今日の会見でも、知事が述べていた『感謝する』という言葉なんですけれども、実際に私が取材している職員でも、普段ありがとうございますとかいう方じゃなかったんですけども、ありがとうございますと繰り返すようになった。その一方、これまで政策に口出しや意見を挟んできたところがあったらしいのですが、それがなくなって仕事がやりやすくなったという意見もあります」

【松浦武司記者】「一方で弊害も出ておりまして、知事が出席するイベントや会議を調整する時に、相手の団体や企業から今回の問題どうなってるんだという指摘があったりとか、知事が出るならイベントや会議を延期したり、中止しましょうという動きになっていて、実際に県政の停滞が起きています」

【田村淳さん】「停滞している状況は、県民にとって良くない状況っていうのは、知事はどういうふうに受け止めて、知事の周りでそのサポートしてる人達は、どのような空気感になってるんですか?」

【松浦武司記者】「知事の周りにいる最高幹部のほとんどが、知事に辞職したらどうかと話しているらしいんですね。ただ辞職して、もう一度出直し選挙をするとか、いろんな責任のとり方があるという信念がある中で、知事は頑なに辞職をしないですね。会見では、3年前の選挙で85万票の県民の負託を受けたから、私は続ける必要があるんだと説明しています」

【田村淳さん】「3年前はこういう問題がなかった知事を選んだのであって、こういう問題が出てきたのであれば、もう1回意見を聞くのが当たり前のような気がするんですけどね」

■安藤優子さんは「コミュニケーション不足と片付けることはおかしい」と話す

【安藤優子さん】「斎藤知事になってから、政策決定が割と密室で行われるようになったっていう話も聞くんですけれども、県の職員たちが不信感を持ったのは相当前からなんじゃないかなって気がするのですが、どうでしょうか?」

【松浦武司記者】「現場の職員の声を拾い上げるというより、ある程度息のかかった幹部で決定をして、強引に進めてしまう。だから職員の声が届かないという声はありました」

【安藤優子さん】「パワハラを受けたと言っていれば、それはコミュニケーション不足ではなくてパワハラなんですよね。そういう認定の仕方っていうのは、今や常識なわけだから、それをコミュニケーション不足だったかもしれないと片付けることすら、おかしいと言う立場を私は取ってますね」

■職員は百条委員会で「本当のことは言いにくい」と話す

【田村淳さん】「百条委員会は、自分が今から証人として出ますっていうのを宣言してからってことですよね?」

【松浦武司記者】「そうですね。今回、事前承認という制度が、各部の総務課長に出さなければいけないんですね。証人として呼ばれてることすら知られたくない方もいらっしゃるなかで、『上長に提出するという動きを周りの同僚が見て、あの人証言するんだなとなったら本当のことはかなり言いにくいです』という話を職員の方は話していました」

【田村淳さん】「ブレーキがかかるでしょうね。そもそも行動に移す時にブレーキがかかるし、なんでこういうルールを作ったのかっていうのが不思議ですよね」

【安藤優子さん】「公務員って守秘義務はあるわけじゃないですか。そうした県民の非常に込み入った事情も知りえる立場にいるわけですよね。業務上だからその守秘義務があるっていう部分は分かるんですけれども、場所は百条委員会ですよね。守秘義務を盾にとって、本当のことが見えてこないっていうことになるのは、私はやっぱりおかしいと思ってるんですよ」

【安藤優子さん】「だから守秘義務はあります。でも、その枠を超えても、ちゃんと白日のもとにさらさなくてはならない事実というのがあるわけじゃないですか。そこを追求しようとしてるときに、守秘義務で証言しにくくなるというのは本末転倒なんじゃないかなというふうに思います」

■県庁の反応は

【吉原キャスター】「喋りやすい環境がなかなか作れていない中で、所属部署の承認が必要。県庁の中ではどういう反応でしょうか?」

【松浦武司記者】「基本的に事前承認は、職員を守るためっていう説明をしてるんですけども、職員の人からすると、事前承認という制度で答えにくくなってしまっていると。個別に事前承認するのではなくて、例えば百条委員会に関しては、一括で承認して欲しいといった声も上がっています」

【田村淳さん】「信頼関係がない状況で、職員からするとこれからのキャリアを握られた状態の中で、ちゃんとした意見が出てくるのか、本当は先頭に立って、全てをつまびらかにして、先頭に立つのが知事じゃないといけないのに、そこの対応がないっていうのはやっぱり不誠実だなって感じますね」

【安藤優子さん】「誰を何のために守っているのかっていうところをちゃんと整理しないと、方便にしか聞こえて来ないですよね」

(関西テレビ「newsランナー」2024年7月24日放送)

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