西日本豪雨からまもなく6年。7月2日から「復興 その先へ」と題し、被災地、倉敷市真備町の復興の道のりと防災対策の今をお伝えしています。4日は、ソフト対策についてです。防災担当の森岡記者です。

(森岡紗衣記者)
「2日にお伝えしたように、倉敷市真備町では2024年、小田川・高梁川の合流点付け替え事業をはじめ行政が主体となったハード面での対策が一つの節目を迎えました。一方で、ソフト面での対策に力を注いできたのは地域の人たちです。災害に強いまちへと歩み続けるその取り組みを取材しました」

玄関先に掲げられた黄色いタスキ。「無事です」と書いてあり、近隣の住民に避難したことを知らせています。これは倉敷市真備町の川辺地区で、「災害時の逃げ遅れゼロ」を目指し2021年から毎年行われている独自の防災訓練です。

2018年7月、川辺地区は約1700世帯のうちほとんどの家屋が水につかり全壊。6人が犠牲になりました。そもそも川辺地区には水害時に使える避難所がありませんでした。詳しい状況は公表されていませんが、住宅からの逃げ遅れも指摘されています。

そうした中、黄色いタスキを使った防災訓練を行っているのが、住民の1人、槙原聡美さんです。

(川辺復興プロジェクトあるく 槙原聡美さん)
「私の自宅も2階の床上10センチまで浸水した。このままでは川辺地区・真備町がダメになってしまうのではないか。どうにかしたいというのが最初の気持ち」

2018年10月、被災した住民の居場所を作りたいと「川辺復興プロジェクトあるく」を立ち上げました。他の住民と協力して炊き出しや防災に関する講演などに取り組んできました。黄色いタスキの防災訓練は2024年で4回目。住民の参加率は65.9%と、23年より4ポイント以上アップし過去最高となりました。

(槙原聡美さん)
「たくさんの家が(黄色いタスキを)掲げてくれていて、この黄色いタスキが地域の絆を結び付けてくれていると感じている」

災害から6年。川辺地区では住民主体の取り組みを続けることで、ある意識が根付きはじめています。

(川辺地区の住民は…)
「災害から6年たつ。地域の人が避難することに対して自覚を持てるようになったと思う」
「5年前6年前のことを思い出す。あの時に何ができたかを考える。今(災害に備えた)何の準備ができるのかを考えていける地域じゃないかと思う」

(中塚美緒キャスター)
「防災訓練への参加率が65.9%、高い数字だなと思いますし、6年経った今でもより意識が高まっている。住民の心がすごいと感じました」

(森岡紗衣記者)
「訓練の参加率が年々上昇しており、改めて住民の高い防災意識がうかがえます。そして川辺地区では2024年、もう一つ大きなソフト対策が実施されました。それが「地区防災計画」です。地区防災計画は地域の住民が主体となって災害時の行動計画を作成するもので、避難所の一覧や災害ネットワークが記載されています。川辺地区では6月に冊子が完成しました」

この日、川辺小学校でお披露目されたのは川辺地区防災計画、「川辺地区みんなのぼうさいガイドライン」です。「あるく」のメンバーをはじめとする住民らで何度も協議を重ね、地区から最も近い避難場所や連絡網などが記載されました。

(川辺地区の住民は…)
「良い取り組みをしてくれているので、住民で協力しあって、地域の絆を深めながら「逃げ遅れゼロ」(を目指したい)。みんなで助け合ってつながりを深められたら」
「(地区防災計画は)これからの子供たちも災害時ベストな行動を選べる基になると思う」

この地区防災計画が持つ意義について、地域防災に詳しい香川大学の磯打千雅子特命准教授は次のように指摘します。

(香川大学 磯打千雅子特命准教授)
「地区防災計画は住民主体の防災計画で、これまでの行政主体の計画とは大きく異なるもの。地域のみなさんが地域の特徴を生かしたマイルールを作って実践していく」

(長尾龍希キャスター)
「住民主体の防災という考え方ですが、最近は少子高齢化であったり、地域のつながりが希薄になりがち。より大切になってきますね」

(森岡紗衣記者)
「また、地区防災計画と同様に、ソフト対策として推奨されているのが「個別避難計画」です。災害時に自力で避難することが難しい高齢者や障害者向けの避難計画で、作成が市町村の努力義務となっています。他の地域でも防災を自分事と意識した災害への備えが広がっていけばと思います」

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