辞職の理由に「リニア開業の延期」をあげ、沿線をはじめ静岡県の自治体からも非難の声があがっていた川勝知事。10日に退職願を提出したあとの会見では、改めてリニア推進の立場であることを強調し、早期開業に向けやってきたことを具体的に説明しました。

JR東海や沿線住民の反応は?

リニア中央新幹線の2027年の開業を断念したJR東海に降ってわいた急展開。
静岡工区の着工を認めてこなかった川勝知事の突然の辞意表明から2日がたった4月4日、JR東海は会見を開きました。

JR東海 中央新幹線推進本部・澤田尚夫副本部長:
辞任されることに関してのコメントに関しては、我々としてはコメントする立場にない。静岡工区含めて中央新幹線の早期の開業に向けてやっていくということには何ら変わりない。全力で取り組んでいきたい

辞任の最大の理由は職業差別ともとれる発言ではなく、リニアの開業延期だと主張した川勝知事。

川勝知事(4月3日):
県民の皆様と約束したリニア問題について、一里塚を超えた。これが一番大きかった

リニアの停車駅の名古屋でリニアグッズを販売している店のオーナーは…

土産物店オーナー:
ずっと引っかき回している印象はあった。遅れさせたことがゴールではなく、進めるためのスタートまで持っていってほしかった。この1週間はがっかりしたり喜んだり、前に進むことがうれしいと思った

突然訪れたリニアの“転換期”、期待する人は神奈川県にも。橋本駅の目の前の場所では、リニア駅の工事が着々と進められていました。
品川駅の次にリニアが停車する駅ができるJR橋本駅付近。工事中の駅は中を見ることはできませんが、駅前を中心に開発が進んでいました。

相模原市民は「(土地が)高騰するんじゃないかと思って、早めに家を購入しようかな」「若い人たちもいっぱい来られるように、いろんなデパートとかもできたら面白い」「もっと便利になってくれたらうれしい」と期待していました。

遅れていたリニアの開業。川勝知事の辞任で加速するのでしょうか。

沿線や県内の自治体から非難の声

「リニアの開業延期が最大の辞職理由だ」と説明した川勝知事ですが、この発言を受け沿線の知事や市長からも批判の声があがっています。

愛知県の大村知事は「大変残念な発言。リニアの早期建設を目指す期成同盟会に入っていたのに我々をたばかったのかと言わざるを得ない」と憤りをあらわに。

山梨県甲府市の樋口市長は「リニアの問題で『静岡の水を守る』と言っていたが、水を使っている職業の人を貶めるような発言だったので静岡県全体を本当に愛していたのかと思う」とコメントしました。

そしておひざ元・静岡県の牧之原市の杉本市長は「『リニアを10年遅らせたのは俺の手柄だ』とすり替えている。リニアをつぶすつもりでやっていたのか」と痛烈に非難しています。

「早期開通の足を引っ張ったことはない」

そして川勝知事は退職届を提出した10日の会見で、改めて“推進派だ”としたうえで「水資源の問題など県が抱えている懸念の解消のために取り組んできた」と訴えました。

辞職の理由について改めてリニア開業の延期だと主張した川勝知事。

川勝知事(2023年10月):
一合目よりは少し進んだという感じ

川勝知事(2023年11月):
(国の)有識者会議の議論は尊重いたしますけれども、それに従うということを一度も言ったことはありません

川勝知事(2024年1月):
私としてはできるところからやっていくということ(部分開業)以外に、促進する方法はないと思っております

これまで事業を否定しているともとられるような発言を繰り返していました。にも関わらずリニアの早期開業を目指す期成同盟会に2022年加わりました。

なぜ加盟したのかその理由を問われると、10日の会見で次のように語りました。

川勝知事が早期開業のためにやったこと

川勝知事(4月10日):
(Q.早期開業に向けて知事は何をしたのですか?)一生懸命に我々は南アルプスの基本的な、期成同盟会も含めた共通理解は総会で決まるが、南アルプスの自然、水資源の保全とリニアの開通、この両立を図るということ。それをするためには南アルプスの自然が守れるか水資源が確保できるのか、この点についてずっとやってきた。それも情報共有できるのが期成同盟会のメリット、それをしてきた。早期開通に対して足を引っ張っているというようなことは一度もありません

静岡県が抱える懸念の解消に向け懸命に取り組んできたと語りました。

川勝知事(4月10日):
(Q.リニア推進派であることに変わりはないのか?)変わりありません。1970年代からやってきて、日本の技術の最先端のエキスがはいっている。それにかけて人生を終えた、後輩に引き継いだ人がいらっしゃる。その思いも知っていますし、(私は)推進派から一度も外れたことはない。ただ南アルプスとの両立をしなければならない。これは難しい課題です

リニアの推進と南アルプスの自然の保全を両立することの難しさはあったのでしょうけれど、川勝知事がリニア計画を遅らせてきたというイメージは全国の皆さんに持たれてしまったのではないでしょうか。

菊地幸夫弁護士:
静岡県が足止めしたとみられてもしょうがない。2027年開業が延期になってから「自分の仕事が終わった」という発言は、それを裏付けるようにも聞こえてしまう

川勝知事は4月10日退職届を出し、5月10日に失職します。

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