今回は4月に開校した、熊本県内初の夜間中学を取材しました。

夜間中学とは様々な理由で義務教育を受けられなかった人や、学びなおしを希望する人たちのための学校です。

開校から1か月、年代や国籍も様々な生徒たちの学びの現場。

授業を受けるのは10代から80代までの幅広い年代の生徒。

ゲンコツですからね

4月に開校した県内初の夜間中学、県立「ゆうあい中学校」です。

今年(2024年)、入学したのは31人。そのうちの1人、1年生の金城碩求(かなしろ せっく)さんは74歳です。

金城さんは今年1月の体験授業に参加していました。

金城碩求さん「(中学校の頃は)勉強する考えはなかったです。後になってしておけばよかったなと後悔するようになった」

金城さんは、60年前中学校に通ってはいましたが、当時の抑圧的な環境が好きになれなかったといいます。

金城さん「こうやってきて、ゲンコツですからね」

当時は嫌々、通っていましたが「新しい環境で、もう一度勉強をしたい」と入学を決めました。

第2次世界大戦の終戦は小学校3年生の夏でした

入学式の2日前、この日教科書が配られました。

約60年ぶりの教科書・・・1冊1冊丁寧に名前を書いていきます。

――今の教科書は?
金城さん「昔と全然違いますね。写真が多いし、きれいだし、それと大きいです。サイズが」

大人になって興味がわいた歴史。早速、教科書をみて予習をしていました。

金城さん「教科書に書いてあるのはひとつでも多く、吸収したいですね」

そして迎えた入学式。

生徒代表の挨拶には年代も境遇もまったく違う2人の新入生の代表が入学への想いを語りました。

田中さん(1年生として入学 最年長の87歳)
「第2次世界大戦の終戦を迎えたのは小学校3年生の夏でした。いまでの私の中では小学生、中学生は空洞のままになっています」


深瀬拓磨さん(当時不登校17歳)
「自分の大好きな自動車に触れる仕事に就きたいという夢をかなえるために、勉強も頑張りたいと思います」

金城さんもの学校生活もはじまりました。

金城さん「中学校は13歳、14歳、15歳でしたから、その時の気持ちを忘れずに頑張っていきたいと思っています」

自分より年上の生徒たちにどう接したらいいのか…

県内初めての夜間学校は教員にとっても初めてのことだらけです。

これまで中学校で数学を教えていた大竹弥真登(おおたけ やまと)教諭(29)。出勤するのは午後1時と、これまでと生活のリズムが変わりました。

学校へ着くと早速授業の準備です。

外国籍の生徒もいるため、教材は英語での説明も必要です。

正の数・負の数は・・・
大竹先生「ここに、A positive number negative number(正の数 負の数)と英語で表記して」

また年配の生徒もいるため、字やグラフを大きく書くことを意識しています。

授業本番。
大竹先生は正の数・負の数を身の回りのものにあてはめながら説明しました。

大竹先生「気温だったり、冷蔵庫だったり、temperature(気温)」

今では、生徒たちと楽しみながら授業をする大竹さんですが、当初は戸惑いもあったといいます。

大竹先生「自分より年上の生徒たちにどう接したらいいのか難しいところがあったんですけど、生徒から『ビシバシお願いします』というように言ってもらって」

柔らかい雰囲気を持つ大竹先生、他の先生からも、評価されています。

1年生の担任 徳丸絹子 教諭
「(生徒たちにかける)言葉が温かいなと思って、一言一言大切にしてくださっていくところは、人柄がでていると思って」

夜間中学は開校から1か月。学びの場として新たな選択肢が生まれました。

大竹先生「生徒が楽しかったや、分かった、出来たという喜びを少しでも感じてもらえるような授業や関わり方を続けていきたいとおもいます」

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