ユネスコの無形文化遺産に登録が決定した日本の「伝統的な酒造り」。
世界に認められた日本の酒造りの技術を生かして、岩手を代表する造り酒屋の南部美人は、岩手県内で初めて洋酒・ウイスキーの生産に挑戦しています。

(久慈浩介社長)
「ここでウイスキーが寝ている」「昔は日本酒をタンクで貯蔵していた蔵です。初代の頃から。それを全部取り出して今は『たる』です」

こちらの蔵に並んでいるのは、2023年の9月以降に生産された、熟成中のウイスキーです。

明治創業の造り酒屋の一つ、二戸市にある南部美人は今、県内初となる洋酒・ウイスキーの生産に取り組んでいます。


新たな挑戦の指揮をとるのは5代目の久慈浩介社長です。

(久慈浩介社長)
「結構色付いてますよね。非常にきれいな色が付いている。時間が経つともっと色が付いてきますけど1年ちょいぐらいでこのぐらいの色が付いてる」

2023年にウイスキーの製造免許を取得して、これまでに熟成しているのは200リットルから250リットルの木製のたる=木だるに入った合わせて40個ほどです。

木だるは新たにクリやミズナラで製作されたもののほか、以前にバーボンやシェリーが熟成されたものを再利用しています。
それぞれの木だるで、味や色、香りにどのような特徴や変化が出るのか、定期的にサンプリングしながら熟成されています。
販売されるまでには木だるに詰めてから最低3年間熟成が必要だということです。


果たして今はどんな味なのか。
「ウイスキーニューメイク」と呼ばれる、成長段階にあるお酒の味を試飲させてもらいました。

(大崎記者リポート)
「喉が焼けるようですがコク、香り、喉ごし…おいしいですね」

南部美人は10日本社で、希望する人向けに有料での試飲を始めます。
お酒の中でも蒸留酒に分類されるウイスキー。
原料は日本酒が米なのに対して、ウイスキーは大麦が使われています。
南部美人は国産のもの、特に宮城県東松島市産の大麦の麦芽を採用しています。
ウイスキーの製造工程はまず大麦の麦芽に温水を加え、糖化させたものをろ過して麦汁を作ります。
それに酵母を混ぜて発酵させます。
発酵までの日数は、日本酒が25日程度かかるところを、3日と短期間です。
これを蒸留器と呼ばれる装置を使って熱し、水より低い温度で気体になるアルコールの蒸気を、冷却して液体に変えたものが無色透明な原酒になります。
これを木だるに詰めます。


これら一連の作業にかかる期間は1週間です。


南部美人でウイスキーの製造を任されているのは現在4人。
試行錯誤を繰り返しながらやりがいを感じています。

(梅内元太蒸留部長)
「透明な蒸留液の香りをかぐ熟成の途中でサンプリングをしていって、その変化が感じられるので、やっぱり飲み頃でお届けしたい」

さらにそれぞれの工程に久慈社長のこだわりが盛り込まれています。

(久慈浩介社長)
「普通はウイスキーの酵母だけで発酵させるがうちの特徴としては日本酒、南部美人の酵母を使ってハイブリッドで発酵させていく」

また、名古屋の製造業者に依頼した銅製の蒸留器は、従来のものと異なりアームの角度を上向きにした特注品です。

(久慈浩介社長)
「角度を高くつけることできれいな蒸留液が取れる。南部美人はきれいで美しい酒を目指しているので、われわれのウイスキーもきれいで美しいものを目指していく」

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