震災の被害から復活を果たした山田町のカキ養殖に今、異変が起きています。
状況の打開を目指して「幻の貝」の養殖に挑戦する漁師の思いに迫ります。
明治20年ごろに始まり、昭和に入ると地域の産業として定着したとされる山田町のカキ養殖。
震災で山田湾の養殖いかだは大きな被害を受けましたが、近年は収穫量も回復し復活を果たしました。そのカキ養殖に今異変が起きています。
(福士貴広さん)
「こういう状況で」
(記者:これで何年物?)
「これで2年物」
山田町で祖父の代からマガキの養殖を営む漁師、福士貴広さんです。
2年ほど前から養殖するカキのへい死に頭を悩ませています。
(福士貴広さん)
「この現状をみると使えるのは半分もないんじゃないかって思うんですよ」
カキのへい死の背景にあるものとは?
(三陸やまだ漁協 菊池紀裕さん)
「水温が昨年もすごく高かったんですよ。その関係で死滅とかが多くなりまして」
2023年と2024年の山田湾の水温の推移です。
カキの出荷が最盛期を迎える3月から、6月にかけて水温が高くなっているのが分かります。
2023年の水温も平年より高かったと言われていて、それよりも月平均でおよそ3度から4度も高い異常な状況が続きました。
県水産技術センターは「高水温も含めて複合的な要因でカキが死んだ可能性がある」としています。
そんな中、今年4月、山田町の漁師がSNSに投稿した1枚の写真が話題となります。
写っていたのは、30年以上前に岩手の海から姿を消したとされる「幻の貝」ヨーロッパヒラガキでした。
(県水産技術センター増養殖部 小林俊将部長)
「驚きはありました。いままで見つかっていない日本で見つかっていないものが岩手にあったということで、どうしてなんだという思いが強かったですね」
ヨーロッパヒラガキは戦後の食糧難に対応するため、1952年=昭和27年にオランダやフランスから日本に持ち込まれたと言われています。
山田町でも養殖を試みましたが上手くいかず、1990年代初めに事業化を断念。岩手の海から消滅したと思われていました。
(福士貴広さん)
「これでだいたい3年ぐらい」
しかしヨーロッパヒラガキは、山田湾などの県内の湾でマガキにくっつくなどして生息し続けていたのです。
福士さんはそれを採取し、5年ほど前から試験的に育ててきました。
(福士貴広さん)
「山田湾にどのくらい入れていいかということすらまだ分からない状態なんで、大量生産っていうのはまだ当面難しいと思う」
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