実はブドウのよう、根はゴボウのよう。しかし、誤って食べた場合、最悪命を落とす危険もあります。全国各地で雑草化する秋の危険植物「ヨウシュヤマゴボウ」とは?
富山県射水市の櫛田神社のSNSに10月に投稿された1枚の写真。実が深い紫に色づき、一見ブドウのようですが、櫛田神社はXで「いつのまにか生えてきたヨウシュヤマゴボウ。この秋らしい色。綺麗だけれど有毒。触らないで下さいね」と注意を呼びかけています。
「ヨウシュヤマゴボウ」は9月初旬ごろから道端で広く自生する毒性の植物です。
実際に神社を訪ねてみると――
櫛田神社 宮川紀子さん
「本当にきれいに垂れ下がっているんですけど」
記者
「すごいときはどんな感じだったんですか」
櫛田神社 宮川紀子さん
「こんな感じで。これが全部ブドウみたいに下がっているんです」
櫛田神社では数十年前からヨウシュヤマゴボウが自生していて、定期的に刈り取り、その数は年々減っていったといいますが――
記者
「毒があることは?」
櫛田神社 宮川紀子さん
「気づいてない。人に言われて。最近ですね。この玉が色水になるんですよね。紫色みたいなのが出てきて、子どもたちに色水づくりして染めたりして。きれいなんです」
花瓶に生けて飾ったり、実をつぶして色水遊びをしたりと、秋の風物詩だったと宮川さんは言います。
櫛田神社 宮川紀子さん
「秋の風情ですね。見られたらそう思うでしょ?秋来たな。ちょっとどぎつい色ですけど」
最悪の場合、死に至る危険性
見た目に反して有毒だという「ヨウシュヤマゴボウ」は一体、どのような植物なのか、専門家に聞きました。
富山大学薬学部 李貞範 講師
「吐き気、嘔吐、下痢、腹痛あたりですね。まあどれくらい食べたかによると思うんですけど。多量の摂取は危険かなと思います」
ヨウシュヤマゴボウは北アメリカ原産ですが、日本には明治初めに渡来し現在では各地で雑草化。
果実と根に有毒成分を含み、食べると腹痛・嘔吐・下痢などの症状がでて、最悪の場合、死に至る危険性もあるといいます。
富山大学薬学部 李貞範 講師
「毒に関してはどちらかというと、根。まあ葉っぱもあるらしいですけど、根ですね。根の誤食によるものが多いかなと思います」
誤食事故が多いという根の部分を見せてもらうと、ブドウのような実の下からは太くて長いゴボウのような根がでてきました。
ヨウシュヤマゴボウはみずみずしくて柔らかく、ゴボウのような繊維質ではないといいますが、色や形が一見、ゴボウのようにも見えます。
誤食事故の背景には「名前の混乱」があるといいます。
富山大学薬学部 李貞範 講師
「ヤマゴボウといって、よく味噌漬けとかで売っている食用のものというのは、実は植物が全然違いまして。モリアザミという植物なんですけども、キクの仲間。これの根っこが食用になっています。日本にも、もともとヤマゴボウという植物もあるんですが、それも実は毒をもっているので食用になりません。なので、名前の混乱があって、どうしてもヤマゴボウという名前で食べられるように思われてしまうので、それでゴボウのつもりで食べてしまって中毒事例があるようです」
李講師などによりますと、味噌漬けやしょうゆ漬けなどで売られている「ヤマゴボウ」は本来「モリアザミ」というキク科の植物です。
また、これとは別に「ヤマゴボウ」という名前の植物(ヤマゴボウ科)もありますが、こちらは毒性で身近に少なく、誤食の危険性は比較的低いといいます。
それぞれまったく異なる植物ですが、名前の混乱や見た目が似ていることもあり、毒をもつ「ヨウシュヤマゴボウ」を誤って食べてしまうことがあるようです。
実はブドウのようで根はゴボウのようですが、実は命の危険もある「ヨウシュヤマゴボウ」。
厚生労働省によりますと、ヨウシュヤマゴボウによる食中毒は2014年から10年間で5件発生していて、去年、香川県内でも60代の女性が、道路脇に生えていたヨウシュヤマゴボウの実を食べて、救急搬送されています。
厚生労働省は以下の点に注意するよう呼びかけています。
▼ヨウシュヤマゴボウを見つけた場合は、実が熟す前に刈り取る
▼食用の植物かどうか見分けに迷ったら、採らない、食べない、売らない、人にあげない
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