福祉事業所の片隅で、毎日ある作業に取り組むの長谷川敏郎さん。それは彼にとって毎日の最も大切な“ルーティン”…。障がいのある人の可能性に注目する特集「アート・ミーツ・ハート」。今回は富山県南砺市から、ひそかに表現を続けているアーティストです。

スタッフの女性「もう朝8時過ぎに来られたら、もう帰りまで、じっくりとビーズに熱を加える作業されてて」

スタッフの女性「こちらですね。いぐさが入っていたり、髪の毛とか、あとガムの包み紙とか…、生活の大部分がこのビーズだと思うんで」

長谷川敏郎さん「この間から当たってきた、この間から当たってきた、当たってきた、この間から当たってきた」

何が「当たってきた」かというと…。

家の中は大変な “ゴミ” でいっぱい?

「作品」として展示され、注目を集めるようになりました。

県障害者芸術活動支援センター ばーと◎とやま 米田昌功 代表
「一番お気に入りはどれですか。じゃあ指さして教えてください、どれですか」

長谷川敏郎さん「なんと、あちらです」「あちらです」

県障害者芸術活動支援センター ばーと◎とやま 米田昌功代表
「ひとの表現って“これだけ自由なんだよ”っていうのが伝わる作品のような気がしたんですよ」

さらに…。

「これこれ、これです。すごく色がきれいで…」

デザイナーの目にとまり、柄のデザインに採用されました。

デザイナー 山口久美子さん「長谷川敏郎さん」「ラブ&ビーズということで、まあビーズラブということ…」

デザイナー 山口久美子さん

長谷川さんのビーズが、カラフルでポップな模様に生まれ変わりました。

このデザインを見た長谷川さんは…。
長谷川さん「すごいですね」

ちょっと照れくさそうです。

母・京子さん「ビーズの面白いところはどこですか」

長谷川さん「ペラペラペラペラ」

母 京子さん「お父さんはこれをゴミだと思った。私もゴミだと思った」「毎日毎日これ1箱ずつできたら、もう大変なゴミになりましたね、家の中はね…」

記者「もしかして捨ててました?」
母 京子さん「ええ、かなり捨てました」
「私たち捨てなくなったのは、この福光美術館で、チューリップテレビさんも取り上げていただいた頃から、これはゴミと思ってはいけないんだいうことが、やっとわかった!」

長谷川敏郎さん「あ、あ、あ、あ、失礼、ごめん失礼」
母・京子さん「失礼やよね、本当に失礼やね」

長谷川敏郎さん「それは失礼、それが失礼」

ビーズに祈りを捧げる “ルーティーン”

自閉症と知的障害のある長谷川さんは、いつも動き回っていて目が離せない子どもでした。

決まったものしか食べない、毎日、三輪車や自転車で同じコースを回り続けるなど、幼い頃からこだわりは強かったということです。

敏郎さんの1日は、不思議なこだわりがいっぱいです。

事業所に到着するとすぐに大事な道具を取り出して、家から握しめてきたビーズを一粒ずつ並べます。そしてー。

アイロンをかけ始めるまで1時間以上、長谷川さんは、ビーズに祈りを捧げるように儀式のような行動を毎日繰り返しています。

母・京子さん「ラグビーで五郎丸さんが『ルーティン』って言葉をはやらしていただいてから、何となく私たちもこういうこだわりいうことをルーティンって考えればいいんだっていうきっかけ」

母の京子さんが長谷川さんと重ねのたのは、ラグビー元日本代表・五郎丸歩選手のルーティン。

ビーズにはまっておよそ7年、アイロンもすでに5代目です。
自宅でも事業所でも、アイロンビーズを作り続けるのが、長谷川さんにとって最も大切な「ルーティン」です。

長谷川さんの「ルーティン」はビーズ作り

ゴミか、アートか…それは見る人次第…

事業所の職員の見方も大きく変わりました。

坂田さん「これ耳に、イヤリングにしようかって言ってたやつ。いかがですかね」「としさんは、アイロンビーズをしているというより、アイロンビーズアーティストなんだねっていうような」

母・京子さん「敏郎が大好きだった祖母が亡くなった時の法事のお客さんへの引き出物です」

長谷川さんのビーズの模様はたくさんのグッズにも使われ始めています。

長谷川さん自身にも変化がー。人と一緒に行動するのが苦手でしたが、今では、みんなとバーベキューに参加するようになりました。

母・京子さん「第3者の人に声をかけてもらったりとかは、抵抗なくできるようにはなりましたね」

母・京子さん「だから、私や家族がこういうことはできないだろうとか、こういう人前に出るのは恥ずかしいから来ないだろうとか、参加しないだろうとか思っていたことが、意外に本人は、やってみようとする気持ちはもともと持っているのかもしれませんね。私たちが信じていなかっただけで」

記者「もしかして、もう飽きました?飽きましたね」

ゴミか、アートか、それは見る人次第。長谷川さんは、きょうも大切なルーティンとともビーズ愛を表現し続ています。

チューリップテレビは11月9日土曜日、富山市のオーバードホール・中ホールで障がいのある人の表現をテーマにシンポジウムを開催します。長谷川さんの表現についてデザイナーの目線から山口久美子さんがお話してくださいます。そして、当日は長谷川さんのたくさんのビーズ作品が会場にやってきます。

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