バレンタインにチョコを贈るのは洋菓子メーカーが考えた文化ですが、「初詣」は鉄道会社が、「土用丑の日」にうなぎを食べるのは平賀源内が考えたマーケティング戦略と言われています。大ヒット商品のウラには、誰かが考えたうまいマーケティングがあるのです。
商品名を隠した“オフレコ出店”戦略
すごいマーケティングをしている会社があるー。
マーケティング分析の専門誌『日経クロストレンド』が、今注目している企業が…。
『日経クロストレンド』編集長 勝俣哲生さん:
「味の素はおそらく日本でもトップクラス。すごく尖った商品や今までの常識と違う商品を生み出せている」
味の素には「スイング・ザ・バット賞」というものがあり、結果に左右されず挑戦的な取り組みを表彰。この“失敗を許容する仕組み”がヒット商品誕生につながっているといいます。
例えば、発売から約6週間で100万食売れた「CookDo 極 麻辣麻婆豆腐用」。
味もパッケージも売り方も、普通じゃないことだらけなんです。
まずはパッケージのデザイン。
食品の場合、「しずる」=食欲を刺激する美味しそうな料理画像を使うのが一般的ですが、「CookDo 極 麻辣麻婆豆腐用」では、黒箱に金文字の商品名。唐辛子や胡椒などのスパイス画像が小さく載っているだけです。
『味の素』マーケティングデザインセンター 篠田大輔さん:
「今までのCookDoとは違うと表現したかったので、あえて“しずる”をなくして、店頭での違和感や高級感みたいなところにめちゃくちゃこだわった」
そして、売り方。
発売前にポップアップショップをオープンしましたが、開店当初はCookDoを名乗らない“オフレコ出店”。
『味の素』マーケティングデザインセンター 篠田大輔さん:
「あえて隠して、美味しさをキチッと理解していただいたところで、実はCookDoでした。これが家で食べられるという驚きを伝えられればと」
これがSNSで大バズリ。
さらに、誰かに言いたくなるほど“ぶっとんだ辛さ”にしたのも戦略の1つです。
辛さは最高レベルの「7」と、専門店のしびれる辛さを求めるマーボー好きを狙い撃ち。日本人に、辛いもの好きが増えているというデータもあり、年間売上6億円突破のヒット商品となりました。
野菜売り場に“顔レタス”が並ぶ違和感戦略
さらに味の素には「昔からある商品を中身を変えずに大ヒットさせた」戦略も。
『味の素』マーケティングデザインセンター 篠田大輔さん:
「オイスターソースの“たくさんは使わない”という概念を壊そうと、こう使えますよというコミュニケーションを新たにやった」
茹でたレタスにオイスターソースをかけるだけでちょっとした一品にー。
レタスと一緒に売り込むために、新聞の全面広告にはレタス農家の大きな顔写真を掲載。この新聞でレタスを包むと、野菜売り場に顔が並ぶ異様な光景に!これが大バズリ。
CMでも、レタスにオイスターソースをかけたら驚くというストーリーで、「信じるか信じないかはあなた次第です」と呼びかけ商品の新しい価値を提案。
一回試してみたいと思わせ、シェアNo.1を獲得したのです。
予約13か月待ちの大ヒット「包丁」…戦略は“共感”
続いての、すごいマーケティングは「わずか1年半で4億円以上売り上げた包丁」。
『日経クロストレンド』勝俣編集長:
「今は商品が優れているだけでは売れない時代。商品のスゴさをお客さんのニーズと合わせて伝えていくという努力が必要。それをエンジニアがやっている企業がある」
マーケティング部じゃないのに包丁を4億5000万円以上売った“技術者”がいるのは、工業用刃物を製造する『福田刃物工業』(岐阜県・関市)です。
ダイヤモンドに次ぐ硬さを持つ「超硬合金」で作られた日本初の包丁「KISEKI」は、手を添えなくてもトマトにすぅ~っと刃が入り、超薄切りもできちゃう切れ味。
わずか3人の技術チームが2年かけて開発しましたが、一般消費者向けの商品は初めて。どうマーケティングするか悩んだ末…
『福田刃物工業』技術部長 福田恵介さん:
「お客様の声を一番大事にしました」
お客さんの意見を聞くため、体験会を何度も開催。切れ味だけではなく、持ちやすさ、疲れ具合などの意見も集め、重心の位置をずらすなど微調整を重ねていったといいます。
体験会に参加した60代女性:
「感動しました。家で使っている包丁は何なんだろうというぐらい」
プロの料理人も、「味に違いが出る」と話します。
創作料理店『葉菜』 水谷千佳さん:
「キャベツの千切りをしたら、切り口がピカピカ光ってツヤツヤ輝くのでスゴいと思いながら、お客さんに出したら『いつもと味が違うからこのキャベツを分けてほしい』と言われて」
「味が違う」となればデータ化!
実際に、味覚センサー試験では野菜の甘さや、魚の旨みが残る結果も出ました。
さらに技術者ながらマーケティングを勉強し、商品のキャッチコピーを決める時は「A/Bテスト」を実施。複数の候補をネットにあげて反応を分析したといいます。
こうして決まったキャッチコピーが、「関市はついに『おいしい切れ味』を手に入れた」
今や予約13か月待ち、1本3万4650円の包丁「KISEKI」は売り上げ4億円超えの大ヒット商品になったのです。
『日経クロストレンド』勝俣編集長:
「SNSなどの普及で企業と消費者の対等感が出てきた中で、『私達こういう人なんですけど共感できる人はいませんか』と、共感できる人とのコミュニケーションで物が売れていく時代」
安住アナの無茶ぶりで後輩アナが“暴走”
大ヒットを生む企業のマーケティング戦略を見て、THE TIME,マーケティング部の部長・安住紳一郎アナは「私たちは何てったってインチキマーケティング部」と自虐ネタで笑わせ「なので今日はちょっとまじめな話」と、ヒットの法則でもあるイノベーター理論を紹介した。
スタンフォード大学の教授が提唱したイノベーター理論は、商品やサービスが普及する過程を5つのタイプに分類したもの。簡単に言うと、
【1】イノベーター⇒「新しさ」に価値を感じ、一番最初に飛びつく人:2.5%
【2】アーリーアダプター⇒クラスのファッションリーダー、インフルエンサー:13.5%
【3】アーリーマジョリティ⇒流行りに比較的敏感で流行についていく人:34%
【4】レイトマジョリティ⇒みんなの流行りに乗っていく人:34%
【5】ラガード⇒新しいものや流行に興味のない人:16%
安住アナは、【イノベーター】を「最初はすごく周りから変わっていると言われる」と話し、「私たちアナウンサーはイノベーターと言われるアナウンサーにならなければいけない」と説き始めた。
飽きられないためには、アナウンサーもちょっとした違和感も必要という“安住理論”。
続く中継コーナーへの呼びかけを「えっ?なんかおかしいんじゃないか、みたいな画期的な呼びかけ、いける?」と佐々木舞音アナに無茶ぶりした。
すると、先輩アナの要望に応えた佐々木アナが“暴走”。
「次~、山口から中継みたいなんですけど、全然見なくていいんです、ホント見なくていいんですけど…」と“違和感”満載の中継フリをすると、安住アナは「やめなさい!やめなさい!」と慌てて制止。「クロルさ~ん」といつも通りの呼びかけで中継コーナーにつないだ。
(THE TIME,2024年9月4日放送より)
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