4月25日は“ペンギンの日”ですが、『ミナミイワトビペンギン』というペンギンをご存知ですか?
目の上の黄色の飾り羽『冠羽(かんう)』が特徴的なペンギンです。
2023年現在、全国10か所の水族館や動物園で100羽ほどが飼育されている中、新潟市水族館・マリンピア日本海でも1羽が飼育されています。ただ、このペンギンは30歳と高齢で両目が見えません。
飼育担当・松浦大志さん(29)と日々を生きる“老ペンギン”を追いました。

ミナミイワトビペンギンとは

かつてタグの色から「あか」と呼ばれていたミナミイワトビペンギン

ミナミイワトビペンギンは体長が30cmほどで、体重は2~3kg。世界で18種類いるペンギンの中でも小型です。南極圏の冷たい海流の影響を受ける『亜南極圏』に生息していて、全世界では250万羽ほどいるといわれています。

野生下の南半球では10月から翌年4月頃まで陸上で生活し、そのほかは海の中で暮らしています。アシカやオットセイなどの天敵から身を守りながら、小魚やイカ、オキアミを食べて生活しています。

日本国内の施設で飼育されているのは、およそ100羽。平均寿命は20~25年ほどと言われる中で、25歳以上は国内でわずか5羽ほど。マリンピア日本海で飼育されているミナミイワトビペンギンは30歳で、実はかなりの高齢なのです。
そんな30歳の“老ペンギン”は、波乱万丈な生涯を過ごしています。

右目をケンカで、左目を白内障で 両目の視力を失って…

マリンピア日本海で飼育されているミナミイワトビペンギンは、1993年に生まれました。

生まれたばかりのミナミイワトビペンギン(画像提供 マリンピア日本海)

1990年の開館以降、マリンピア日本海では6羽のミナミイワトビペンギンを飼育していたものの、現在残っているのは1羽だけです。

以前はペンギンの飼育エリアでフンボルトペンギンと一緒に飼育されていました。しかし、このミナミイワトビペンギンはフンボルトペンギンの巣を乗っ取ってしまうことがあり、たびたびペンギン同士でけんかになっていたといいます。

以前はほかのペンギンと一緒に展示されていた(画像提供 マリンピア日本海)

そしてある日、激しいけんかの末に右目を失明しました。その後、加齢による白内障で左目も見えなくなり、両目の視力を失ったのです。

その後も同じエリアで飼育されてきたそうですが、施設内の側溝に落ちて上がれなくなったり、ほかのペンギンやカラスなどから攻撃される恐れがあったりしたため、6年前から通常展示ではなくバックヤードで飼育されているそうです。

飼育担当2年目の松浦大志さん(29)は「マリンピア日本海で飼育しているフンボルトペンギンと比べると、翼でたたかれたときの強さが違います。やはり30歳と高齢なので筋力が衰えているんですよね」と話します。
以前は、かなり攻撃的だったというミナミイワトビペンギンも年齢には勝てないのかもしれません。

目が見えずにどうやって生活?

さて、目が見えないミナミイワトビペンギン。どのように生活しているのでしょうか、飼育の様子を見せてもらいました。

ミナミイワトビペンギンの餌はアジ。ボールに入れて与えます。
目が見えないので、飼育担当の松浦大志さんが壁をたたいて合図をすると、食べにやってくるといいます。
この時も音に反応して近づいてきましたが…「今は食べませんね」と松浦さん。

毎日の食べる量は“食欲”に合わせて決めているといいます。
1年に一度羽が生え変わる「換羽」の前は羽を作るためにエネルギーが必要となり食欲が増すことから、1日あたり300gほど与えているそうです。ただ100gしか食べない時もあれば、300g以上食べる時もあるということで、体重が2kgを切らないように調整しています。取材した11月上旬の体重は2.3kgでした。

ミナミイワトビペンギンの足裏は黒いんです

ちなみに、ペンギンの足元には人工芝のマットが敷いてあります。
これは長時間立っていると足の裏に“マメ”ができることがあるため、緩和するために敷いているそうです。

その後はプールで水を飲んだり羽づくろいをしたり泳いだり…さらに天気がよければ外で日光浴。紫外線を浴びることでカルシウムの吸収に必要なビタミンDを生成するそう。人間と一緒ですね。

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