“コク”を生む調味料「ギー」ってなに?
「きょうは鶏モモと夏野菜のスパイスカレーです」
熊本県高森町にある地域のコミュニティスペースでは週に1度、ママ友数人が集まりランチを振舞っています。この日は月に一度のカレーの日。
参加者「めっちゃ美味しいです コクがありますね コクが」
「コクがあると思います」
参加者が口をそろえて言う“コク”の秘密は、「調味料」にありました。
川並まゆみさん「うちで作っているギ―を入れました。これは旦那が作っています」
聞き慣れない調味料「ギー」とは、一体どんなものなのでしょうか?
バターから生まれる「高純度」オイル
やってきたのは、熊本と大分の県境に位置する熊本県小国町。自宅の工房で迎えてくれたのは、まゆみさんの夫、川並功(かわなみ いさお)さんです。ここで約20年、「ギー」を作り続けています。
――ギーとはなんですか?
甘露堂 川並功さん「ギーは“お乳の油”です」
「ギー」は、バターから水分やたんぱく質などを取り除いた高純度のオイルのこと。インドの伝統食材で、アメリカのニュース雑誌『TIME』では、“世界で最も健康に良い食品ベスト50”(2015年)に選ばれたこともあります。
川並さん「1000通りの使い方があると言われている」
料理に限らず眼球疲労のエステなどで使われていて、川並さんは虫さされの手当てに愛用しています。
川並さん「かゆくなくなる。解毒作用があると言われていて、子どもは生まれてからずっとギーを使っている」
※川並さん個人の使用方法です
川並家の必需品であり、世界的にもスーパーフードとして注目される「ギー」。どのように作っているのでしょうか?
まずは「バター」を入手
まず、川並さんが仕入れにやってきたのは、JA阿蘇の乳製品加工場です。
川並さん「小国のジャージー牛乳からできたジャージー牛乳バターです」
小国町はジャージー牛の一大産地。味が濃く乳脂肪分が多いミルクから作ったバターを使うことが、川並さんの一番のこだわりです。
自宅に帰り、さっそく製造を始めました。
【製造1日目】
まずは大きな鍋に16キロ分のバターを入れ、弱火でゆっくり溶かしていきます。すると約6時間後…。
川並さん「バターミルクが上に上がってきている」
ギ―に使うのは、純度99.8%以上の「乳脂肪分」だけ。そのため、分離したタンパク質や糖分などの「バターミルク」を丁寧にすくって取り除きます。
【製造2日目】
翌日も弱火にかけ続け、純度を高めます。
川並さん「ちょっと甘い香りがしてきました」
――まだ完成ではない?
川並さん「まだまだです」
…と、ここで少し気分転換。川並さん、工房の外で三味線を弾き始めました。
川並さん「いい音を聞くと美味しくなるんじゃないかな?自分も気持ちが良くなるし」
川並家の食卓は「ギー必須」
インドで暮らしたことのある川並さんの食卓は、どんな料理にもギーが登場します。例えば野菜炒めにも、仕上げにギーをひと回し。
川並さん「ソーメンの出汁にいれたね」
まゆみさん「いつものソーメンにプラスアルファのコクが出て、油分が加わったうま味が増える」
川並さん「ギーがないと寂しいね」
まゆみさん「そうね」
その後、午前1時にも鍋の様子を伺いに来た川並さん。細心の注意を払いながら、丸2日間火にかけ続けました。
【製造3日目】
そして迎えた、3日目の昼過ぎ。
川並さん「もういい感じになっていますね。この先にいけば、おいしいものがある香り」
最後に油を濾して瓶詰めすれば、川並さん自慢の『手作りギー』が完成。黄金色は、純度の高い証です。
最後に、ギー初心者でも簡単・シンプルに味えるトーストの作り方を、川並さんに教えてもらいました。
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