新潟県十日町市の山間の集落に、一軒のレストランがオープンしました。
オーナーシェフは、東京から移住してきた男性。
目指すのは、地元の人との交流ができるお店です。

十日町市松代地域にある人口70人の蒲生集落に6月下旬オープンした『MURA PUB(ムラパブ)』。土日限定で営業する事前予約制のレストランです。

地元の食材がふんだんに使われた「里山料理」と名付けられたメニューは、全ておまかせ。ランチは2200円、ディナーは3850円です。

オープンしておよそ1か月。
この日もランチのお客さんがいらっしゃいました。
「玄米は何で炊かれるんですか?土鍋?」
「普通に鍋で…」
「ゆでるんです」

小さな集落でレストラン『MURA PUB(ムラパブ)』をオープンさせたのは、富山県出身の料理人・正力俊和さん(42歳)。20代のころはバックパッカーで世界30か国を旅し、日本帰国後は東京の和食の店で料理人として働いていました。

そんな時、友人の紹介で松代地域を知り、3年前の2021年に十日町市の「地域おこし協力隊」としてこの集落での生活を始めました。
このころの主な仕事は、松代地域の宿泊施設・松代棚田ハウスでの調理人でした。

「前の生活を全部リセットして移住するってのは結構覚悟がいるので、3年間の間に生活の基盤を作って、その先の生活につなげるっていうのはすごい魅力的だと思います(当時の正力さん)」

2024年3月いっぱいで協力隊としての任期を終えた正力さん。
今後について考えたとき、四季を通じて食材が豊富なこの地域の食文化や豪雪地帯ならではの生活の知恵にほれ込み、定住することを決めました。

【正力俊和さん】
「世界で雪が4m積もる地域がほかにないってことは、ここに根付いている生活文化、食文化ってのは、ほかの国や県にはないものですよね。だからそこが、僕はすごく特別なところだなと」

定住を考えていた正力俊和さんに集落の知人が、かつて工場(こうば)として使われていた建物を貸してくれることになりました。

しかし、築およそ30年のこの建物は最近まで使われていなかったため、住むにしても、新たにお店をオープンするにしても“改築”が必要です。

そこで、正力さん自ら手を加えることにしました。

「おととしの年末くらいから空き時間にやり始めて、今やっとこんな感じです…」

“改築”に励む 正力俊和さん

地域の人から譲ってもらった資材を建物の改築に使うなど、費用を抑える工夫をしながらおよそ1年半かけて改築をすすめました。

人口70人の蒲生集落(新潟県十日町市松代地域)への定住を決めた正力俊和さんは、かつての工場を1年半かけて自ら改築したオープン前のレストランに、集落の人たちを招待しました。

「ありがとう」
「ありがとうございました」
「ゆっくりしていってください…」

オーナーシェフとして正力さんが料理を作るときに大事にしていることは、地元の食材ならではの味を“引き立てる”ことです。

「そもそも食材が美味しいから…」
「僕の使う調味料ってほとんど塩としょう油とみりん、酒くらい」
「それだけで、“地域の野菜のうま味”が十分引き立つ」

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