【埼玉-BL東京】前半、キックパスを出すBL東京のリッチー・モウンガ=国立競技場で2024年5月26日、長澤凜太郎撮影

ラグビー・リーグワン プレーオフ決勝(26日、東京・国立競技場)

○東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)24―20埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉)●

 紙一重の激闘だった。BL東京が今季全勝の埼玉を破り、リーグワンでは初の頂点に立った。

 持ち味である接点の強さに、SOリッチー・モウンガらの個人技を加えた攻撃で接戦に持ち込んだ。17―20でリードされた後半34分、ラックから右サイドで細かくパスをつなぎ、バックスの森勇登が逆転トライを決めるなど24―20とリードした。

 残り時間約1分。埼玉に逆転トライを許したかに見えたが、映像で判定するテレビジョン・マッチ・オフィシャル(TMO)の介入によりトライが取り消された。モウンガは「本当に細かい瞬間で勝負が決まった。(埼玉のフッカー)堀江(翔太)さんのパスが50センチ後ろだったら、結果は全く逆のものになっていた」と振り返る。

 昨季はプレーオフに進める4位以内にも入れなかった。巻き返しを期す中で、今季はナンバー8のリーチ・マイケルが約10年ぶりに主将復帰。トッド・ブラックアダー・ヘッドコーチ(HC)は「自分たちが王者になると想像した時、彼に主将として引っ張ってもらうことを最初に考えた」と明かす。

 さらにニュージーランド代表や南半球最高峰リーグ・スーパーラグビーでの経験が豊富で「勝ち方」を知る世界屈指の司令塔、モウンガが加入し、「自分のできることすべてを東芝(BL東京)にささげたい」と、惜しげもなく技術や経験、一発勝負に臨む心構えを優勝経験がない仲間に伝えた。フッカー原田衛は「マイケルさんとリッチー(モウンガ)がポジティブな声かけをしていた」と語る。

 かつては「親に見せられない」と評されるほどの過酷な練習で旧トップリーグ時代に5度の頂点に立った名門。一方で東芝が度重なる経営問題に直面し、選手獲得に苦戦する時期が続くなど2016年度以降は中下位に甘んじ、思うような強化は進まなかった。リーチは「明らかに現代と過去のラグビーの間で止まっていた」と苦しい時期を回顧する。

 それでも19年に就任したブラックアダーHCのもと、接点の強さに速さと技術が融合する「新しい東芝のラグビー」が徐々に浸透、円熟味を増す。個人では高校、大学時代を含めて初めて日本一になったリーチは早くも次の目標を語る。「これからもチャンピオンを継続できるように、レガシーにしていきたい」【高野裕士】

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