インターネット上の仮想空間「メタバース」。一見、高校野球とは結びつかない技術を採り入ていると聞き、札幌南に伺いました。どんなこと、しているのかな?

 中心は野球部データ班の和田未来さん(3年)と吉田柊斗(しゅうと)さん(同)。2人とも野球経験はなく、数字やデータが好きで、データ班に入ったそうです。普段は対戦相手のデータ集めや分析を担当しています。2人はパソコンなどを駆使して、メタバース上に部室などをつくりました。「関係ないものも、野球につなげてやらせてくれて楽しい」と話します。

 コロナ禍で全体練習が減り、集まることが少なくなったことで、田畑広樹監督(41)が提案。メタバース上でミーティングなどを開いたそうです。監督は「実際に集まっている感覚があり、つながりを感じられた」と振り返ります。メタバースでは、登録した自分の分身「アバター」を、メタバース空間で自由に動かして行動します。

 どんなものなのか、VRゴーグルをつけて体験します。おおー、すごい! 今いる部室が再現されてる。「お、未来さん、こんにちは」。会話もできます。あれ? 実際にはない屋上に向かう階段があるぞ。登ってみよう。えっ、ライブ会場がある。

 佐藤舞采(まあや)マネジャー(2年)は昨年12月、メタバース上でクリスマス会を企画。色々な音階の打球音をつなげた「ジングルベル」を披露しました。全部員がスマホなどを使って参加したといいます。

 「野球以外の人とも野球部をきっかけにつながれた。メタバースでもっとつながりたい」と佐藤さん。昨夏の甲子園を制した慶応(神奈川)の応援に刺激され、野球部オリジナル応援歌の募集も企画。軽音楽部やホームサイエンス部、卓球部の田中夢星(ゆらら)さん(3年)、三枝(みつえだ)遥紀さん(2年)、箕田莉旺(りおう)さん(同)、玉置将吾さん(2年)の4人らが応募し、今夏に向けて作成中だそうです。

 通信状況など技術的な壁はありますが、メタバース上で選手の投球や打撃を米国のコーチに指導してもらうことや、チームが甲子園に出場し、メタバース上の応援空間に1万人を集めることが夢だそうです。

 様々な取り組みを選手たちはどう見ているのか。ダブル主将の浅野佑亮さん(3年)、村尾壮太さん(2年)は「甲子園に行き、データ班も有名にしたいという刺激になっている」。田畑監督も「データ班の頑張りで、バーチャルでの野球の可能性を感じたし、リアルの野球の魅力も、より感じるようになった」と話します。

 野球に興味がない人も「メタバースがやれるなら」と野球部に入るなど、野球の間口が広がることで新たな可能性につながる。何かが生まれるかもしれない、とワクワクしました。

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