大相撲夏場所14日目(25日、東京・両国国技館)
○大の里(押し出し)湘南乃海●
勝ち名乗りを受ける大の里の息は、ほとんど乱れていなかった。一気の攻めで一時は優勝争いの先頭に立った湘南乃海を圧倒。新入幕から3場所連続となる11勝目は、「史上最速」の幕内優勝に王手をかける白星だ。
立ち合いで素早く右を差すと、左からは絞ってからの強烈なおっつけ。これで上体を起こすと休まず出て、最後は俵に詰まった湘南乃海の胸をどーんと突いて勝負を決めた。
当の本人は「よかったっすね」と素っ気ない。だが、土俵下で見守った九重審判長(元大関・千代大海)も、「レベルが違う。もう、圧勝。大の里にしかスポットが当たらない相撲だった」と手放しでたたえる内容だ。さらに優勝3回の元大関は「一息で(攻めて)勝つことができた」。千秋楽に向けて体力を「温存」できたことが大きいと指摘する。
対照的に3敗で並んでいた琴桜は完敗。突き押しをしのいで阿炎を土俵際まで追い込んだまでは良かった。だが、相手に腕をたぐられると形勢は逆転し、押し出された。上位の責任を一身に背負う重圧からか、支度部屋では言葉少なだった。
琴桜、阿炎を含め4敗にも可能性のある優勝争いは混迷を極める。だが、ここに来て大の里は迷いのない前に出る攻めが際立つ。千秋楽の相手は優勝経験者で勢いに乗る阿炎。それでも、九重審判長は「(優勝決定戦を)想像するのが難しいくらい、大の里の調子がいい」と言い切る。
千秋楽に向けては「最後の一番を取り切るだけ」と大の里。その言葉通り雑念を振り払った相撲の先には快挙が待っている。【岩壁峻】
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