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◇◇取材こぼれ話◇◇
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《基礎情報》羽根田卓也 選手
“自分の仕事を全うする”
急流の中をゲートを通しながら進むカヌースラローム。
羽根田選手は、片側にブレードがついたパドルを使うカナディアンシングルの第一人者で、リオデジャネイロ大会では日本カヌー界に初めてオリンピックのメダルをもたらしました。
この銅メダル獲得で一気に注目を集め、その後も、日本のカヌー界をけん引し続けるレジェンドは、去年のアジア選手権で優勝し、5大会連続のオリンピックの切符をつかみました。
羽根田卓也 選手
「もしかしたら最後になるかもしれないオリンピックだと思うので、しっかり思いをぶつけて、また皆さんに何かを届けることができたら最高。自分のできることをしっかり見つめて、自分の仕事を全うすれば結果はついてくる。できるだけ高いところを目指してやりたい」
“区切り”の東京五輪を経て
実は羽根田選手は、自国開催となった3年前の東京オリンピックを1つの“区切り”と考えていました。
「自国開催ということは選手にとって何よりも意味のある大会であり、東京オリンピックは自分にとって大きいものだった。そこで区切りをつけるかはすごく考えた」
ところが、自国開催の大会は、羽根田選手が知る、かつてのオリンピックとは大きく形の違うものとなってしまいました。
新型コロナウイルスの影響による無観客開催。
現地での熱量や応援を感じられない異例のオリンピックのあと、この先どうするかを考えた時に最後の一押しになったのは支えてくれる周りの人たちの声だったといいます。
「東京オリンピックが終わったあとに、思った以上に周りから『次はパリだね』と自然に声をかけてもらった。それで、まだまだ選手を続けて頑張ることに意味があるんじゃないかなと思った」
さらなる進化へ“0秒1”を削り出す
パリオリンピックへ向け、羽根田選手が今磨いているのが、最短距離で、ゲートぎりぎりを攻めてカヌーをこぐ動きです。
10センチ遅れると、0秒1のタイムロスが出ると言われるカヌーは、攻めすぎてゲートに触れてしまうとペナルティーになります。
そのため、体幹を使ってバランスを保ち、いかに最短距離を進めるかがカギを握ります。
羽根田選手がそのわずかな差が勝負を分けると実感したのが、リオデジャネイロ大会でした。
銅メダルを獲得した羽根田選手と4位の選手との差は、およそ0秒1。
このわずかな差が、メダル獲得の命運を分けたのです。
「数センチがいかに勝負を分けて自分の人生を変えていくかという勝負の厳しさを、身に染みて自分が1番よくわかっている。そこはシビアに突き詰めている」
そのために取り組んできたのが、スキーなど別の競技のトレーニングです。
バランスをとる力を高めるために体の使い方を徹底して学んできました。
「とにかくバランスを保てていないと、体をのけぞるなどのぎりぎりの体勢ができない。カヌーだけではなくて、さまざまな運動や動きの中から運動能力の底上げをすることは心がけている」
5大会目で“新たな挑戦”
これまでに出場した4回のオリンピックは、自分のために挑んできたという羽根田選手。
「新たな挑戦」を掲げたパリ大会ではさらに進化した姿で、支えてくれる人やファンの応援の声に応えるため全力を尽くす考えです。
「東京オリンピックまでは自分主体の挑戦だったが、パリオリンピックでは応援してくれる人の顔を思い浮かべながらの挑戦になるかなと思う。これまでよりも“一緒にオリンピックに臨む”という気持ちが強い。自分のすべてを出す、そのチャレンジする姿を届けられるようにパリに臨んでいきたい」
◇◇取材こぼれ話◇◇
羽根田選手が東京オリンピックのあと、主な練習拠点としてきたのが江戸川区にある「カヌー・スラロームセンター」です。
羽根田選手は「カヌーの人工コースが今までは日本になくて、それを求めて僕は長い間、ヨーロッパでトレーニングを重ねていた。施設ができたことによって、次世代の選手がこれから育っていくことは間違いない」と、その可能性を評価します。
オリンピックに向けて新設されたこの会場は、大会後の活用方法が課題となってきました。
いまこの施設はトレーニングにとどまらず、さまざまな用途で使われています。
市民も楽しめるカヌーやラフティングなどの体験会、消防による水難訓練などです。
羽根田選手は「選手や競技団体だけの施設では決してなく、地域に密着するあり方がいいんじゃないか」と話します。
オリンピックの舞台で長く活躍してきたトップランナーの目には、カヌー界だけでなく、スポーツ界の未来の可能性も映っているように感じました。
(2024年4月22日「ニュースウオッチ9」で放送)
《基礎情報》羽根田卓也 選手
▽生年月日:1987年7月17日生
▽出身:愛知県豊田市
▽主な実績:
・2016年 リオデジャネイロ五輪銅メダル
・2021年 東京五輪10位
・2014年、2018年アジア大会 金メダル
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