アスリートならではの考察はもちろん、当事者だからこそ明かせる秘話に、球界のうわさ……。なぜ、元プロ野球選手たちは「ユーチューバー」として活動するのか。ユニホームを着ていた頃にはうかがい知れなかった素顔も垣間見ることができる。元ヤクルトの宮本慎也さんに話を聞かせてもらった。

 ――ユーチューブを始めた理由を教えてください

令和のプロ野球

1934(昭和9)年に始まり、「文化」として根付くプロ野球。それは、国民を魅了する娯楽であり、時に世間の一大関心事にもなる。元号が令和に変わった球界の「いま」に、様々な角度から迫ります。

 「選手としての経験や、指導者として気がついたり、勉強したりしたものを伝えたかった。ユーチューブなら時間の制約を気にせず、野球について伝えることができる」

 ――どういう視聴者層を意識していますか

 「野球に携わっている人に見てもらいたい。もちろん、全く知らない人が見て好きになってくれるのもうれしいけれど、マニアックに作っている。チャンネル名も『解体慎書』で、打撃理論から野球評論と、多岐にわたる内容を細部まで深掘りするイメージ」

 ――球の投げ方や捕り方など実演が多く、最新のスポーツ科学を採り入れているのも特徴的ですね

 「自分でやってみせることで、プロの技術ってこうだとか、こんなことを考えているというのが、より分かりやすくなると思う。文章や写真よりも映像の方が、理解しやすいのではないだろうか。選手たちには何らかの気づきのきっかけにしてもらえれば」

 「現役を引退して、野球を外から見ていると、野球の理論はどんどん変化し、間違っていることもたくさん見えてきた。自分が分かる範囲で伝えていきたい。例えば、少年野球でいまだに何年も前の教え方をしている大人がいる。そういう人たちもチラッと見て参考にしたり、変わるきっかけにしたりしてほしい」

 ――もしも、宮本さんの少年時代に、ユーチューブのような動画共有サービスがあったならば

 「いい影響があったかもしれない。頭を使ってプレーしている子どももいるけれど、経験を積んだプロみたいにすごく細かいところまで考えてプレーしている子どもはいないと思う。ユーチューブを見ることによって『こうやってみよう』と、実際のプレーにつなげられたかも」

 ――印象に残っている収録はありますか

 「一番最初。まさか、自分がチャンネルを持つとは思わなかった。面倒くさいし、やる必要がないと考えていた。今は、自分のペースで野球を専門的に伝えられる場として、すごく勝手のいいメディアだと思ってやっている」

 ――元プロ野球選手が続々とユーチューブで発信している状況を、どう受け止めていますか

 「色んなツールで情報を手に入れられる時代。その一つだと思うし、野球が広まるのであればいいこと。『宮本はこう考えているんだ』ということが、顔出しでアーカイブとして残る。だからこそ、野球のことに関しては、無責任には話せない。一方で、その意見に対して、視聴者が書き込みなどで色々と反応できるのも、新しい野球の楽しみ方なのでは」

 ――ユーチューバーとしての今後の活動について方針を教えてください

 「スタイル的には変わらずやっていきたい。だから、自分も勉強し続けなければならない。野球理論はどんどん進化して変わっていく。それについていかないと。色んな人に話を聞いて、自分の中に取り込んで、アウトプットしていきたい。見ている方と一緒に野球をアップデートできるチャンネルづくりを目指したい」(聞き手・福角元伸)

 みやもと・しんや 1970年生まれ。大阪府出身の元プロ野球選手、野球評論家。大阪・PL学園高2年夏に全国制覇。同志社大、プリンスホテルを経て、94年秋のドラフト2位でヤクルトへ入団。プロ通算2133安打。遊撃手と三塁手でゴールデングラブ賞を計10度獲得した名手。2008年北京五輪では野球日本代表の主将、18、19年はヤクルト1軍ヘッドコーチを務めた。「解体慎書【宮本慎也公式YouTubeチャンネル】」(https://www.youtube.com/@miyamotoshinya)が好評。

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