実戦を重ねる中で、どう心を落ち着かせるかを体得したと語る林選手=駒沢大・根岸大晟撮影

 1月2、3日に行われる東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)。学生が作る毎日新聞紙面「キャンパる」の編集部は毎年、注目校を1校選び、大会に向けて深掘り取材してきた。今大会では、10月の予選会をトップ通過、11月の全日本大学駅伝で初出場ながら7位に入賞しシード権を獲得して勢いに乗る立教大学に注目。主要メンバー4人の大会にかける熱い思いに迫った。1人目は、林虎大朗(こたろう)選手(4年)だ。【上智大・清水春喜(キャンパる編集部)】

悔いを残した過去2大会

 林選手は中学から本格的に陸上競技を始めた。大牟田高校(福岡)在籍時は3年連続で全国高校駅伝に出場した実績がある。立教大学に進み、最上級生となった今季はエースとして普段の練習でも全体を引っ張る。口数は少なく、言葉よりも走りで見せる選手だ。

 箱根駅伝では過去2大会、いずれも往路の1区を任された林選手。ただ、区間順位はいずれも18位だった。「前々回の時は緊張や不安が大きかった。レース内容もよく覚えていないくらいだった」そうだ。

 一方、前回大会は準備をしっかり整え、自信をもって臨めたという。実際に自己ベストも更新できている。にもかかわらず、区間順位は同じ18位だった。原因として挙げたのは対応力の不足だ。途中でハイペースになったレース展開に対応できず悔いが残ったという。「ハイペースになってもしっかり対応して、メンタルでも負けないようにしなければならない」

海外プロ選手から得た刺激

副主将として「言葉よりも走りで見せる」スタイルでチームを引っ張る林選手(中央、白キャップ姿)=立教大学陸上競技部提供

 3月にはチームでただ一人渡米し、米国のプロチームとの強化合宿に参加した。「この1年は自分の成長にとって大事な年になる。何か変えたい」。そんな危機感ゆえの行動だったが、これが大きな転換点になった。海外の長距離のプロ選手に交じっての練習で、「走りはもちろん、生活習慣のレベルから競技に対する姿勢が全然違う。そんな姿に奮い立たされた」という。

 陸上との向き合い方を見直す機会にもなった。「彼らは企業に所属することなく、自らの走りで稼ぎ、五輪出場を目標にする。その一方で、純粋に競技を楽しんでいた。そんなプロ選手から得るものは多かった」

 合宿の成果が表れて、今季は安定感のある走りができるようになったと手ごたえを感じている。「場数を踏み、経験を積むことでリラックスして走れるような心の持ち方、心の整え方を知ることができた」。さらに夏合宿では、レース展開の変化への対応力を身に着けたという。

チームのあるべき姿に思いをはせて

 目前に迫った箱根駅伝の目標を尋ねると「チームとしてシードを獲得すること」という答えが返ってきた。「これまで予選会の調整に時間を割いていたが、シード権を取れればその時間を本戦への準備に使うことができ、さらに上位入賞を狙える」という。

落ち着いた口調で話す林選手だが、「競り合う場面では絶対負けたくない」と負けん気をのぞかせる一面もあった=駒沢大・根岸大晟撮影

 自身の目標は、起用された区間で9位以内の順位になることだ。これはシード獲得(10位以内)を意識しての設定だという。「残り5キロまでリラックスし、そこから上げていきたい。競り合うようならば突き放したい」と闘志を燃やす。

 後輩に対しては「前々回、立教大は55年ぶりに箱根駅伝で復活を果たし、今回で3年連続の出場を決めた。でも、ここからが始まりだということを意識してほしい。チームとしての伝統を作る段階にきている」と呼びかけた。チームの将来を思う言葉が印象的だった。

 卒業後は、地元福岡の西日本鉄道で実業団選手として活動することになる。「帰ったら少しでも地元に恩返しをしたい」と抱負を語った。

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