37歳の真道選手はWBC=世界ボクシング評議会女子フライ級の元チャンピオンで、7年前に性別適合手術を受けて戸籍上の性別を変え、その後、JBC=日本ボクシングコミッションに対して、男性のプロテスト受験を希望してきました。

試合で受けるダメージなど安全管理の面での知見が十分でないことなどを理由に受験は認められませんでしたが、去年、公式戦に近いルールで男性のプロ選手とスパーリングをして敗れたものの3ラウンドを戦い抜いていました。

そして17日、真道選手は所属する大阪市のジムで本石昌也会長とともに記者会見し、本石会長は、ことし3月に再びJBCからプロテストの受験は認められないと回答があったことを明らかにしました。

JBCは、理由として、男性プロボクサーとのスパーリングでパンチへの耐久力に不安を抱かせたこと、それが選手特有の問題か、性差によるものかは判別が困難だが激しい体の接触を伴う競技の特徴を踏まえて、安全管理上に問題が生じるおそれがあるなどと説明したということです。

真道選手は、「若かったら『まだ頑張るぞ』と思ったかもしれないが、男性のプロ選手とのスパーリングを見てもらって認められないのであれば、リングから降りようと思っていた」と述べ、戸籍上の性別を変更して男性プロのリングに上がるという日本選手では初めての挑戦を断念することを明らかにしました。

そのうえで「リングを通して生き様を残すことができた。同じような当事者や、世の中で困難がある人たちの何かにはなれたのかな」と話していました。

プロ断念までのいきさつ

真道ゴー選手は和歌山市出身の37歳。

20歳の時にボクシングを始め、2013年にはWBC=世界ボクシング評議会の女子フライ級でチャンピオンになりました。

性同一性障害であることを公表しながら活動していましたが、2017年に性別適合手術を受け戸籍を男性に変更し女性と結婚したことを受けて現役を引退しました。

その後は障害がある子どもたちに対してスポーツを通して学習を支援する施設の代表として経営に専念してきましたが、「自分が成長する姿を子どもたちに見せたい」と感じてきました。

さらに自分の子どもから「パパはなんでリングに上がらないの」と尋ねられたことがきっかけとなり男性としてプロを目指すことを決め、おととし、JBC=日本ボクシングコミッションにプロテスト受験の書類を提出しました。

JBCはジェンダーの専門家や医師などで作る委員会に諮問し、委員会からは真道選手の実績や体力測定の結果を踏まえて「テストケースとして受験を認めることは可能だ」と答申を受けたものの、去年7月の理事会で試合で受けるダメージなど、安全管理の面での知見が十分でないなどとしてプロテストの受験を認めませんでした。

その代わりに女性として生まれてその後、男性として社会生活を送る選手について、血液検査で男性ホルモンの「テストステロン」の基準値などをクリアした場合に限って公式戦の会場で男性の選手とスパーリングを行うことができる新たなルールを定め、真道選手については特例でプロの男子選手とのスパーリングを許可しました。

そして、真道選手は去年12月、およそ1200人の観客を前に大阪市内で当時プロ5戦2勝だった男子ボクサーとスパーリングを行いました。

スパーリングは3ラウンド制で、JBCのレフェリーが試合を裁いて採点した上で勝敗を決する方式で行われ選手はともに公式戦と同様、ヘッドギアを着用せず、8オンスのグローブで臨みました。

真道選手は最終の第3ラウンドでダウンを喫し、判定の結果、敗れたものの、的確にパンチを当てる技術も見せ、JBCの関係者からは「プロと遜色ない打ち合いだった」と評価する声も挙がっていました。

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