サッカー・J1に初昇格して最終節まで優勝を争ったFC町田ゼルビアの黒田剛監督(54)が、「心の師匠」と呼ぶ人がいる。試合前のルーティンや、子供の名前にも影響を与えたという指導者は、元日本代表監督の岡田武史さん(68)だ。
黒田監督は試合前、神社への参拝を欠かさない。自著「勝つ、ではなく、負けない。」(幻冬舎)には、自宅や町田のクラブハウス近くの神社だけでなく、アウェー戦の際もホテル近くの神社に出向くと記している。
シーズン中の今年9月、刊行記念として東京都町田市内で取材の機会があり、参拝の習慣ができたきっかけの一つとして「岡田武史さんの影響がある」と語った。
「昔(お酒を)一緒に飲んだ時があり、『(監督業に)正解はない。自分の勘を信じられるかどうかに、最終的には行きつく』という話を聞いた。そこで神社の話が出たわけではないけど、自分も勝利を追い求めている中で、やれることは全てやろうと思った」と振り返る。
岡田さんは、日本代表が初出場した1998年ワールドカップ(W杯)フランス大会で監督を務め、再び日本代表を率いた2010年W杯南アフリカ大会では決勝トーナメント進出に導いた。人生の幸不幸は予測できないという意味の「人間万事塞翁(さいおう)が馬」という言葉を好む。
94年から22年まで青森山田高サッカー部の監督を務めた黒田監督は岡田さんの姿勢に相通じるものを感じ、10年ほど前から神社仏閣に足を運ぶようになった。対戦相手の分析や選手に戦術を徹底させることなど、試合に向けた準備をやり尽くした上で、黒田監督は「最後は神頼みだ」と思ったという。
以前から強い縁も感じていた。黒田監督の息子で後に青森山田高サッカー部に進む凱さんは98年6月生まれで、名前の由来はパリの凱旋門(がいせんもん)。同じ頃、岡田さんが率いる日本代表はW杯フランス大会で奮闘していた。凱さんも交えて岡田さんと会食したこともあったという。
岡田さんは横浜F・マリノスを率いていた03、04年にJ1で連覇した。尊敬する「師」と同じJ1の舞台で、存在感を示したシーズンとなった。【高野裕士】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。