バレーボール男子日本代表監督に選出されたロラン・ティリ氏=東京都内で2024年12月2日(日本バレーボール協会提供)

 バレーボール男子日本代表の新監督に選出されたロラン・ティリ氏(61)が2日、オンラインで記者会見を行い、今後の取り組みについて語った。

「私の経験を掛け合わせる」

 ここ8年の飛躍的な成長で世界の強豪の仲間入りを果たした男子日本代表だが、今夏のパリ・オリンピックでは準々決勝のイタリア戦で惜敗した。悲願の五輪のメダルを獲得するため、今後、何が必要なのか。ティリ氏のビジョンは明快だった。

 「日本は大変優れた選手の集まった素晴らしいチームで、既に高い技術を持っている。私の経験を掛け合わせることで、ロサンゼルス五輪へ向けて飛躍できる」

 ティリ氏は母国で開催されたパリ五輪で解説者を務めており、現地で日本代表の試合をすべて観戦した。

 敗因について「五輪特有のストレス、プレッシャーが選手間で広がった。大切な場面で2、3回の悪いアタックがあった」とみる。

 2012~21年に監督を務めたフランス代表も同じ経験をしていた。

 15年のワールドリーグ(現ネーションズリーグ)を制し、翌16年にリオデジャネイロ五輪に臨んだが、重圧から力を出せず、1次リーグで敗退した。

バレーボール男子日本代表監督に選出されたロラン・ティリ氏(中央)と記念写真に納まる日本バレーボール協会の川合俊一会長(右)と南部正司・男子強化部長=東京都内で2024年12月2日、日本バレーボール協会提供

 苦杯を糧にしたからこそ、21年の東京五輪で頂点に立てたとティリ氏は考えている。その後、フランス代表はパリ五輪で2連覇を達成した。

 「フランスとの差は経験の一言に尽きる。惜しくも勝利を逃した経験も重要だった。大事な場面で肩の力を抜いて、のびのびプレーできるようになった。日本は、まだ、その段階でなかった。パリ五輪の敗戦も欠かすことのできない貴重な経験だ」

 だから、今後の4年間での取り組みは決まっている。

 「進むべき道は一つ。すべての国際大会に表彰台を取りに行く気持ちで臨み、強豪と厳しいプレッシャーの中で試合をする。経験を重ねることでロス五輪の表彰台が見えてくる」

 フランス代表で歩んだ金メダルへの道を、日本代表を率いて再びたどる考えだ。

 しかし、決して、高圧的に押しつけるタイプの指導者ではない。

 「私のバレー哲学は日本のバレーと通じるところがある。技術に重点を置き、チームメートへの信頼や連帯、連係を大切にする」など日本へのリスペクトを盛んに口にする。

バレーボール男子日本代表監督に選出されたロラン・ティリ氏(中央)と記念写真に納まる日本バレーボール協会の川合俊一会長(右)と南部正司・男子強化部長=東京都内で2024年12月2日、日本バレーボール協会提供

 近年の日本代表の成長をたたえ、今の路線も継承するという。

 パリ五輪後、日本代表を一時的に離れると表明した選手もいるが、「そういう気持ちになるのは当然。まず対話を重ねることが大事」と歩み寄る姿勢を示す。

 ある強化関係者は「個性の強い選手ばかりのフランスをまとめあげた。個を尊重するマネジメントのうまい監督」とたたえる。

 世界一の経験があり、伝え方にも優れている。世界の頂点が見えつつある今の日本代表にとって、最高の指導者との歩みが来春から始まる。【小林悠太】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。