第77回春季栃木県高校野球大会(県高野連主催、朝日新聞宇都宮総局など後援)は4日、宇都宮清原球場で決勝があり、白鷗大足利が宇都宮商を5―3で下し、7年ぶり2度目の栄冠に輝いた。両校は18日から群馬県で開かれる関東大会に出場する。優勝した白鷗大足利は18日に群馬2位の前橋商と、準優勝の宇都宮商は19日に今春の選抜大会で優勝した群馬1位の健大高崎と対戦する。
同点の八回裏1死満塁で、白鷗大足利の小野寺応助(3年)が右打席に立った。「なんとか食らいついていこう」。スライダーを右翼線に打ち返し、勝ち越し打に。「思うような安打ではなかったが、結果として得点につながりよかった」
相手はノーシードから勝ち上がってきた宇都宮商。2点を追う七回、先頭の篠原飛羽(3年)に続き、小野寺は安打を放った。次打者も出塁して無死満塁になると、投手の一塁への牽制(けんせい)悪送球を突いて同点のホームを踏み、試合の流れを奪った。「自分たちは弱いチームではない。本来持っている力を発揮できれば勝てる」。苦しい時間も焦らず、「ここからだ」と仲間に声をかけ続けた。
この日、チームは前日の準決勝で完投したエース昆野太晴(3年)を温存した。捕手の小野寺は先発の山口幸大(3年)ら特徴の違う3投手を巧みにリードし、四回以降で走者を許したのは七回だけ。相手打線の特徴を次第につかみ、逆転勝ちにつなげた。
昨年9月、右ひじを痛め、秋の公式戦に出場できなかった。「悔しさを今大会でぶつけた」。投げられない代わりに筋力トレーニングに励み、打撃練習に取り組んだこともこの日に生きた。
春の関東大会、さらに夏の栃木大会に向け、直井秀太監督は「結果的に優勝できたが、試合を重ねるほど課題はでてくるもの。さらに向上心をもってやってもらいたい」と表情を崩さなかった。(高橋淳)
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栃木県高野連は4日、今大会の優秀選手16人を発表した。優勝した白鷗大足利からは、投手の山口幸大(3年)ら4人が選ばれた。首位打者も同校の小野寺応助(3年)で、打率は5割6分3厘だった。優秀選手は次の通り。
小野寺応助、八角勇羽、篠原飛羽、山口幸大(以上白鷗大足利)、山崎翔大、飯村允喜、浅見碧人(以上宇都宮商)、高橋心春空、藤井悠利(以上国学院栃木)、堀江正太郎、小松啓人(以上文星芸大付)、入江祥太(石橋)、福田昂ノ甫(佐野日大)、広田瑠稀哉(作新学院)、永井竣也(青藍泰斗)、八木橋凌真(小山南)
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作新学院、文星芸大付に続いて私学の強豪撃破を目指した宇都宮商は、あと一歩及ばなかった。主将の飯村允喜(3年)は「終盤に粘れなかった。詰めの甘さが出た」と悔しさをにじませた。
序盤、宇都宮商にとっては理想的な試合展開だった。三回までに野中玲臣(3年)らが適時打を放って3点を先取。前日の準決勝で完投した山崎翔大(3年)が六回まで白鷗大足利打線を1点に抑えた。
転機は七回だった。「勝利が見えてきたと思ったところで隙があった」(飯村)。満塁のピンチでマウンドに集まった宇都宮商の選手たちには一塁走者が油断しているように見えた。ベンチも同じ判断で、牽制(けんせい)球でアウトにする作戦を決めた。
山崎は牽制が苦手ではない。しかし、ショートバウンドして大きくそれた。この間に2走者がかえって追いつかれ、八回に勝ち越しを許す流れをつくってしまった。
山崎自身は「自分の力不足」と言い訳しなかったが、疲れが出る大会の最終盤で、練習通りの牽制球を投げることは難しかったのかもしれない。
白鷗大足利は代打と救援投手を次々と送り込んだ。宇都宮商打線にとっては、目が慣れる前に次の投手が登場する感じで、追加点を奪えなかった。私学との選手層の差が今後の課題になる。
山口晃弘監督は「選手たちはだいぶ自信がついたと思う」とたたえる一方で、「夏の大会で戦えるチームにしたい」。32年ぶりの関東大会を、さらに力をつける好機にするつもりだ。(津布楽洋一)
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