<トライアスロン日本選手権 再起をかける選手たち④>

日本選手権連覇を目指し、体を動かす高橋侑子=愛知県みよし市で(山内晴信撮影)

 トライアスロンの第30回日本選手権(日本トライアスロン連合、東京新聞・東京中日スポーツ主催)が17日に東京・お台場海浜公園周辺(51.5キロ=スイム1.5キロ、バイク40キロ、ラン10キロ)で開催される。パリ五輪が終わり、アスリートにとっては一区切り。新たな目標へ再出発する有力選手4人を紹介する。   ◇    ◇

◆パリは個人40位「今季で終わろうと思う」

 自身2度目となる今夏の五輪は個人40位。3年前と違い、試合直後に次への闘志は湧いてこない。8月末で33歳。高橋侑子はパリにいるうちに、師事するパウロ・ソウザコーチに気持ちを伝えた。「今季で終わろうと思う」。ポルトガル人指導者に「今すぐ決めなくてもいいじゃないか」と慰留されても揺るがない。一線を退いて第二の人生を始めるつもりだった。

 高橋侑子(たかはし・ゆうこ) 相互物産所属。2021年東京五輪は女子個人18位、混合リレー13位、24年パリ五輪は女子個人40位。アジア大会は女子個人、混合リレーの両種目で18、23年に連覇を達成した。日本選手権は18、19、23年に優勝。33歳。東京都三鷹市出身。

 だからこそ今、自身の心変わりに驚いている。スペインでの世界選手権に臨んだ10月。現役に未練があることに気付いた。ソウザコーチのチームでともに練習する同僚の奮闘に「自分ももうちょっと頑張れるんじゃないか。ここで中途半端なまま逃げ出すよりは、納得いくまでやってみてもいいんじゃないか」と思い直した。

プールで練習する高橋侑子(手前)=愛知県みよし市で(山内晴信撮影)

 もともとけがはなく、まだ引退後にやりたいことも見つかっていない。「どんな道があるかというのは(競技を)やりながら見えてくるかな」。選手として挑戦を続けながら、今後の身の振り方を考えることにした。

◆「これからにつながるレースができたら」

 幼いころに遊び感覚で、親しんでいたトライアスロン。本格的に取り組んだのは高校生になってからだった。「新しい可能性を感じられて楽しかった」と夢中になった。2017年からは海外に拠点を移し、ソウザコーチのもとで実力を伸ばした。アジア大会は2大会で金メダル四つ。自国開催の五輪にも出場した。競技を通じて知り合ったライバルは、他愛もないことでも話す気が置けない仲間になった。心地よい居場所から離れるのは、寂しかった。

ランニングする高橋侑子=愛知県みよし市で(山内晴信撮影)

 2年後の愛知・名古屋アジア大会も、4年後のロサンゼルス五輪も視界にはない。世界選手権後は帰国し、合同練習で若手に助言を送った。第一線で戦える時間が残り少ないことは自覚している。そんな中で迎える日本選手権(17日、東京・お台場海浜公園周辺)では、2度目の連覇が懸かる。「今季は思うような成績が出ていないけど、やってきたことは間違いない。これからにつながるレースができたら」。次の夢を探す競技人生の「延長戦」。再スタートに勝利で花を添えたい。(山内晴信)=おわり 【連載①】「人生で一番大きな目標」は出場すらできなかった 元王者・北條巧は、再起を賭けて4年ぶりのお台場に挑む
【連載②】パリ五輪より「高校生活を満喫したかった」史上最年少女王・林愛望 ロスを目指し、Vを国際舞台の弾みにする
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【連載④】「納得いくまでやってみてもいい」 五輪で一線を退くつもりだった高橋侑子は、競技人生の「延長戦」に挑む(この記事)

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