<密着マーク・町田>
 初昇格のJ1で夢見た優勝は夢のままで終わってしまうのか。3位のFC町田ゼルビアは残り3試合で1敗も許されない崖っぷちに追い込まれた。逆転優勝にいちるの望みを残すが、9日のFC東京戦は鬼門の東京・国立競技場が会場と戦況は厳しい。大一番を前に、完全シャットアウトの緊迫した雰囲気で調整した。(加藤健太)

取材に応じるFC町田ゼルビアの黒田剛監督=7日、東京都町田市で

◆対戦するFC東京は会場との相性抜群

 チームは今季最長となる5戦未勝利の停滞から抜け出せず、次戦で負ければ優勝の可能性が消滅。追い打ちを掛けるように、スタジアムの壁が立ちはだかる。  Jリーグを盛り上げる企画「THE国立DAY」の一環で、町田はホームゲームのうち4試合を国立競技場で行う。「大観衆の前で町田の強さを見せつけたい」という黒田剛監督の思いとは裏腹に、これまでヴィッセル神戸、横浜F・マリノス、浦和レッズの人気クラブを相手に1分け2敗と勝てていない。  一方、相手のFC東京は相性が良い。新国立に改修されて以降は公式戦9戦で負けがなく、今季も4戦全勝。黒田監督は「アウェーの雰囲気をすごくつくってくると思う。そういうことを百も承知で挑んでいかなければ」と国立決戦に向けて警戒を強めた。

◆「勝てていない現実を受け止めるため」

 前節は、J2降格が決まっている最下位のサガン鳥栖に1―2と不覚を取り、開幕前に目標に掲げた勝ち点70への到達がかなわなくなった。クラブは打開しようと、急きょ5、6日の練習を非公開に変更。7日の取材対応も短時間に制限した。  その意図を問われた黒田監督は「目や耳から入るものをシャットアウトしてサッカーに集中したかった。勝てていない現実を受け止めるために、静かな環境でやることも狙いの一つ」と落ちついた口調で説明した。

8月に国立競技場で浦和レッズと対戦し、引き分けに終わった町田イレブン。今季、国立競技場では1分け2敗と勝てていない=国立競技場で(浅井慶撮影)

 大観衆が予想される東京ダービーで受け身になれば、一気に雰囲気にのみ込まれかねない。黒田監督は「(前節までの)敗戦や引き分けを引きずって重く入るのではなく、吹っ切れて自信を持ってやることが重要」と心構えを説いた。

◆「若手のヒントに」 主将・昌子は出場停止でも遠征に同行 

 ただ9日にFC東京に勝っても、勝ち点7差で追う首位の神戸が10日に勝てば町田は優勝に届かなくなる。窮地に立たされる中、2試合ぶりに復帰する主将の昌子源は「ピッチでやるべきことを僕が先頭を切ってやりたい」と責任感をにじませた。  鳥栖戦は累積警告で出場できなかったが、指揮官に要請され、出場停止の選手としては異例ながら遠征に同行した。試合前日のミーティングでは「若手のヒントになればと思って」と、結果が出ていない選手に自身の経験を伝えて後押ししたことを明かした。

主将の責任感をにじませるFC町田ゼルビアの昌子源=7日、東京都町田市で

 百戦錬磨の主将は「FC東京が国立で負けていないのはあくまで数字上のもの」と強調し、普段と変わらず明るく取材を切り上げた。白星から遠ざかる状況下の国立決戦で逆境をはね返し、望みをつなげられるか。史上初となる初昇格チームのJ1制覇を夢で終わらせるわけにはいかない。 

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