DeNA―ソフトバンク(3日・横浜スタジアム)
今季のDeNAは他球団を戦力外となった選手やトレード、現役ドラフトで加入した選手の活躍が光った。言わば「ハマの敗れざる者たち」。その踏ん張りが、26年ぶりの日本一の一因となった。
「『過去は変えられない』って言う人は多いじゃないですか。でも、僕は『過去は変えられる』と思っているんです」。今季29セーブを挙げ、抑えとして救援陣を引っ張った森原康平投手の言葉だ。
2017年に新日鉄住金広畑(現日本製鉄瀬戸内)から、楽天にドラフト5位で入団した。強い直球を武器に当初から重要な中継ぎとして起用された。だが、6月ごろから調子を崩してしまった。19年には29ホールドを挙げたが、その後に苦しんで22年途中にトレードで移籍。DeNAには「拾ってくれたようなもの」と感謝する。
今季もシーズン半ばで調子を崩した時期があった。だが、配球を大きく見直したことで復調した。クライマックスシリーズ(CS)に入ってからは肩の状態が思わしくなく、ベンチ外もあったものの「気持ち」で復活。日本シリーズの場に立てたのは「奇跡です」という。
サブマリン右腕の中川颯投手はオリックスの育成選手だったが、23年オフで戦力外となってDeNAに移ってきた。当初は先発要員だったが、今は貴重なリリーフで自己最多の29試合に登板した。「改めて環境って大事だなと思う。環境が変われば良くなることもある。いろんな人に勇気を与えられているかもしれない」と口にする。
つらい時期もあった。ただ、今は「野球人生で後悔したくなかった。純粋に野球を楽しもう。腐らずにやっていれば、誰かが見てくれるのかな」と話す。巨人を戦力外の堀岡隼人投手、現役ドラフトでロッテから来た佐々木千隼投手も似たような歩みだ。一方で生え抜き組も、山崎康晃投手は序盤に守護神の座を失ったが、救援陣のリーダー役として仲間を鼓舞してきた。
森原投手や中川投手らはCSのファイナルステージ中、食事をして話した。「『過去を変えよう』。今結果を出せば、前の苦労や挫折も全部正解だったことになる」。そう誓い合ったという。
1998年の日本一以降、暗黒時代のチームからは主力の流出が続いた。今は違う。時折、中川投手は他球団の選手から質問を受けるという。「DeNAの雰囲気や様子を聞かれます。『いいところ』と説明すると、うらやましがられます」
球団には特有のおおらかで温かい雰囲気が漂う。かつては出て行きたい球団だったベイスターズが、入りたくなる強い球団に生まれ変わった。
【岸本悠】
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