東京・両国国技館で開催中の第102回全国学生相撲選手権(毎日新聞社など主催、大正製薬協賛)には、不思議な「ジンクス」がある。この大会で活躍した大相撲の新大関・大の里も首をかしげるこの謎と、3日に実施される団体戦のポイントを、日本相撲連盟常務理事の勝田晃三さんに聞いた。【大村健一】
「学生時代の4年間で、ジンクスは本当なんだなって実感しました。覆したいと思っていたんですが……」
大の里が語るジンクスとは、大会初日に個人戦で優勝した選手(学生横綱)の所属大学が、2日目の団体戦では敗れてしまうというものだ。団体・個人のダブルV達成は、2006年の日大までさかのぼらなければならない。日大、日体大、東洋大、近大など有力校の顔ぶれに大きな変化がない中、20年近く「2冠」は出ていないことになる。
大の里自身もこのジンクスに翻弄(ほんろう)された一人。日体大1年時の第97回大会(19年)で学生横綱を獲得した一方、団体戦では準決勝で日大に屈し、日大はそのまま優勝を果たした。逆に、3年時の第99回大会(21年)では団体戦を制したものの、学生横綱に輝いたのは日大の川副圭太選手(現・大相撲西幕下29枚目・川副)だった。
3日の団体戦ライブ配信で解説も務める勝田さんは「大会初日の個人戦で優勝し、緊張感が緩んでしまうということはあるかもしれない」と推測する。今大会では、初日の2日に、日体大の主将・ブフチョローン選手(4年)が学生横綱の座をつかんだ。3日の団体戦で日体大は優勝候補の筆頭だが、ジンクスをはねのけることができるか。注目が集まる。
団体Vの行方 カギを握る金沢学院大
では、団体戦を制するのはどの大学か。勝田さんは、日体大を軸に日大、東洋大、拓大、近大などがしのぎを削る展開を予想。一方で、今大会の特別な見どころを指摘する。
その一つが、優勝候補の一角、金沢学院大の存在だ。金沢学院大は、西日本選手権で敗れたため、今大会はBクラスからのスタートとなった。Bクラスでも上位4校はAクラスに進出でき、金沢学院大はまずこの4校に名を連ねることが優勝の条件となる。
Aクラスの予選に出場するのは計16校。全チームの総当たりではなく、対戦は1校3回のみで、5人制の星取り戦方式だ。Aクラスの所属チームは過去大会の成績に基づきあらかじめ決められている。ただし、Bクラスから勝ち上がったチームの対戦相手は抽選で決まる。金沢学院大がBクラスを通過した場合、Aクラスの予選でどの大学が対戦することになるのかが、勝負の行方を占うポイントとなりそうだ。決勝トーナメントに進出する8チームは、予選でのチームの勝利数と各選手の勝ち星の数に応じて決まる。
勝田さんが指摘するもう一つのポイントは、Aクラス8強以上が対象となる「フリーオーダー」システム。試合ごとに選手や対戦の順番を入れ替えることができる方式で、以前導入されていたものが今大会から復活した。「強い選手を前半に固めるか、後半に置くか。監督の采配も重要なポイントになります」
「学生横綱」が誕生する個人戦に注目が集まりがちだが、「各大学とも団体戦に照準を合わせて1年間、稽古(けいこ)を重ねています」と勝田さん。注目の団体戦は、3日午前10時からBクラストーナメントがあり、同日夕にAクラスの優勝校が決まる。
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