【WBAバンタム級王座戦】井上拓真に勝利し、ベルトを掲げる堤聖也=有明アリーナで2024年10月13日、幾島健太郎撮影

ボクシング WBAバンタム級タイトルマッチ(13日・有明アリーナ)

○堤聖也(角海老宝石)―井上拓真(大橋)●=堤は新王者

 打ち合いを志向する自らのスタイルを貫き、堤聖也が12年前の雪辱を果たした。世界のベルトの重みをかみしめながら、「やっぱりうまい相手だったけど、『心の火』をともすことができた」。井上拓真有利の下馬評を覆す勝利は、2日間で世界戦7試合という異例の興行の一つのハイライトになった。

 序盤からリングを猛進し、左右に強振。けおされた井上に何度もロープを背負わせた。決定打がなくても、陣営が堤に声をかけたのは「攻めろ、攻めろ。前に出ろ」。言葉通りの攻めを遂行し、十回には左フックでダウンを取った。「技術うんぬんより気持ちで相手が上回ってきた」という井上の敗戦の弁が全てを物語る。

 同学年の2人の因縁は、2012年夏までさかのぼる。

 高校2年の全国高校総体ライトフライ級準決勝。前年に1年生ながらピン級を制した神奈川・綾瀬西高の井上に、熊本・九州学院高の堤は判定で敗れた。高校在学中の13年にプロデビューした井上に対し、平成国際大に進んだ堤は5年遅れの18年にプロ転向。井上はその年の暮れに暫定の世界王座を獲得した。

 常に井上が先を行っていた2人の歩みは、世界タイトルマッチで再び重なり合った。「この日のためにずっと生きてきた」という一戦を制すと、井上への感謝の思いもこみ上げてきた。「彼がいたから、強くなれた。人生の恩人です」

 井上を含め、チャンピオン経験者がそろう1995年度生まれにあって「僕は劣等感強く育ってきた」。そんな自分が世代の旗手に勝利した。達成感もそこそこに芽生えたのは、バンタム級の王座統一だ。「(王者は)4人とも日本選手。そういう試合(統一戦)をやっていきたい」

 心に、新たな火がともった。【岩壁峻】

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