米国人の父と日本人の母を持ち、ハワイ州で生まれ育った日本製鉄堺の渡辺晃瑠選手=堺市で2024年4月26日、滝川大貴撮影

 来日当初、想像以上の寒暖差に苦しんだ「ハワイ育ち」である。第72回黒鷲旗全日本男女選抜バレーボール大会(5月1日開幕)で70回目の出場を誇る日本製鉄堺に昨年、米ハワイ大から加入した渡辺晃瑠選手(24)だ。その名は「こーる」と読む。

 米国人の父と日本人の母を持ち、ハワイ州で生まれ育った。日本国籍を持つ。チームに加わったのは2023年7月だ。最大の魅力は、193センチの長身を生かした最高到達点345センチのジャンプ力。高さのあるブロックや角度のあるアタックで存在感を示した。来日初年度となった今季は、腰痛で離脱がありながらVリーグで26試合に出場。プレーオフでチームは6位に終わったものの、自身は最優秀新人賞を獲得し、「自分のキャリアの中ですごく良いスタートを切れた。新人賞を取れたのは驚きです」と振り返った。

最高到達点345センチ

最高到達点345センチのジャンプ力が魅力の日本製鉄堺・渡辺晃瑠選手=堺市で2024年4月26日、滝川大貴撮影

 幼少期は家族とともにハワイと日本を行き来する機会も多く、短期間ではあるが日本の幼稚園に通ったこともある。当時の記憶はおぼろげだが、「バスで(幼稚園に)通い、みんなと遊んだことを思い出しました」と言う。

 ただ、南国育ちゆえに日本に来て頭を悩ませたのが寒さだ。想像を絶する寒さに加え、太陽が見えない日が続くと落ち込むこともあったというほどだった。「(日本人の)母からは『(冬も)そんなに悪くないよ』と聞いていたんですが……。服は5枚重ねで手袋も手放せなかったです」と明かす。

 渡辺選手はハワイでの高校時代、バスケットボールもプレーしていた経験があるが、2歳上の兄にはプロバスケットボールBリーグ選手がいる。琉球に所属する飛勇(ひゅう)選手で、3年前の東京オリンピックの日本代表にも選ばれた実績を持つ。

兄はBリーグ選手

バスケットボールの男子日本代表に選ばれ、東京オリンピック前に行われたイランとの国際強化試合に出場する渡辺飛勇選手(中央)=セキスイハイムスーパーアリーナで2021年6月23日、和田大典撮影

 兄を追うように渡辺選手にも日の丸を背負うチャンスが訪れた。厳しい寒さを乗り越えた3月、パリ五輪に向けた日本代表候補に初めて選ばれた。「小さい頃から兄を追いかけてやっと同じ土俵に立てた。(兄からはテレビ電話で)『誇りに思う』と言われました」。言葉には憧れてきた兄に近づけた実感がこもった。

 ハワイ大で日本語を学んでいたこともあるが、今は辞書を片手に勉強中だ。それでもチームメートとも積極的にコミュニケーションを図る明るい性格である。ある程度理解できても通訳を介して話すことは多く、「日本語を話すのは恥ずかしいし、すごく緊張しちゃいます」と笑う。ただ、チームの拠点は大阪だけに「おおきに」「なんでやねん」といった関西弁はすぐに習得した。

 黒鷲旗大会は初出場となる。「ベストプレーを見せたい。ブロックや力強いアタックで貢献してみせます」。チームの起爆剤になることを誓った。【下河辺果歩】

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