錦木(右)が小手投げで若隆景を破る=両国国技館で2024年9月18日、宮武祐希撮影

大相撲秋場所11日目(18日、東京・両国国技館)

○錦木(小手投げ)若隆景●

 土俵際で若隆景をねじ伏せた力強さとは対照的に、取組を終えた錦木のコメントは力が抜けている。終盤で賜杯争いに絡んでも「別にトップを走っているわけではないし」。緊張感あふれる戦いに「もう疲れたっす……」。無欲の34歳が幕内下位からじわりと調子を上げている。

 2敗同士の対決となった若隆景との幕内での対戦成績は0勝4敗。この日も立ち合いで若隆景に右四つを許した。上手を探り合う状態から若隆景が巻き替えてもろ差しを狙ったが、錦木も差し返して左四つに。頭をつけて前に出てきた相手を最後は両腕でひねり倒すようにして小手投げを決めた。

 「あれしか勝つ方法がなかった」と錦木は語るが、後半戦で白星を並べ続けるベテランに、八角理事長(元横綱・北勝海)は「努力をしている人は力を発揮するし、勝負を諦めない」と賛辞を贈る。

 初土俵から9年かけて2015年夏場所で十両に昇進。その1年後に新入幕を果たした錦木は、まさに「努力の人」である。十両と幕内を行き来した時期を経て、23年秋場所には33歳で初めて三役(小結)に昇進してもいる。

 「夢は小さくコツコツと」と笑いを交えて語るが、その言葉を地で行く土俵人生だ。賜杯争いの話題を向けられても浮足立つことはなかった。ここ数場所は負けが込んで西前頭13枚目まで番付を下げていただけに、今の目標は「番付をちょこっとずつ戻すことじゃないですか」。地道に星を重ねた先に、大きな喜びが待っているかもしれない。【岩壁峻】

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