豊昇龍(右)を攻める翔猿=両国国技館で2024年9月11日、前田梨里子撮影

大相撲秋場所4日目(11日、東京・両国国技館)

○翔猿(引き落とし)豊昇龍●

 きわどい勝負で大関戦を落としてから1日、割り切れない思いを抱えた翔猿の良薬は白星に他ならなかった。この日は終始主導権を握って大関・豊昇龍に勝利。「どんどん(自分から)攻められたのは良かった」と納得の表情だ。

 互いに見合っての立ち合い。翔猿は豊昇龍を中に入らせないようもろ手で突き放すと、相手が出ようとした瞬間に思い切った引き技。バランスを崩した豊昇龍の左手が土俵をはき、勝負あった。

 前日の琴桜戦は土俵際で下手投げを打って相手の体が早く落ちたように見えたが、軍配は琴桜に。取組後は複雑な表情を浮かべた。

 物言いがつかず、どよめきに包まれた取組の動画を翔猿自身、何度も見返したという。微妙とも言える結果が物議を醸しているのを知ってはいたが、「耳に入れないようにしたし、思い出さないようにした」。何より「(結果が)どうなることもない。次やるしかない」と言い聞かせた。

 32歳になった今も土俵狭しと動き回る小気味よい攻めを貫き、幕内上位に定着する。西前頭筆頭の今場所は、成績次第で三役返り咲きも狙える。悔しい思いも、これで封印。「一番一番、集中するだけ」。後ろを振り返る暇はない。【岩壁峻】

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