ボクシングのダブル世界戦が3日、東京・有明アリーナであり、4団体統一世界スーパーバンタム級王者井上尚弥(31)=大橋=は、世界ボクシング機構(WBO)同級2位のTJ・ドヘニー(37)=アイルランド=に7回TKO勝ち。戦績を28戦全勝(25KO)とした。

井上尚弥、3、4回で相手の動きを見切る

 試合開始のゴングが鳴ってからの1分半。井上尚が放ったのは、左のジャブを2発だけ。ソローリ、ソローリと自分に言い聞かせているような、慎重な滑り出しだった。

 今年5月、東京ドームに4万3千人の観客を集めた元王者ルイス・ネリ(メキシコ)との防衛戦で、1回にプロ初のダウンを喫した。

 そこから逆襲し、6回TKO勝利を収めたが、「ボクシングへの向き合い方が変わった」と振り返る。

 この日の相手は、37歳の元王者。前評判は圧倒的に井上尚の優位だが、前日計量から試合までに10キロ以上も体重を増やすのが常のドヘニーは、左拳に一発逆転の威力を持つ。

 足をすくわれるのは、こんな時。そんな危機感を誰よりも感じた井上尚は、「テーマは丁寧なボクシング」とネリ戦の教訓を生かした。

 序盤は距離をとり、強い右を振るのは数える程度。3、4回の採点は割れたが、その間に想定外に守備的だったドヘニーの動きは見切った。

 5、6回は上下に強打をたたき込んでダメージを蓄積させ、7回開始早々の連打でドヘニーの腰が悲鳴をあげた。試合続行不能でTKO勝ち。

 ただ、会場が歓声で沸く前の唐突な幕引き。「守備に回る選手とやっていて、正直、楽しくなかった」「中途半端で終わってしまった」。

 バツの悪そうな顔には、もう少し歯ごたえのある相手と戦いたいと、書いてあるようだった。(塩谷耕吾)

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