パリ・パラリンピックのバドミントン車いす女子ダブルス決勝でラケットを振る里見紗李奈(手前)と山崎悠麻=パリ、ロイター

パリ・パラリンピック バドミントン車いす女子ダブルス決勝(1日、ポルトドラシャペル・アリーナ)

山崎悠麻(36)里見紗李奈(26)=銀メダル

 金メダルを獲得した東京パラリンピックの歓喜は、パリで再現できなかった。里見紗李奈(26)、山崎悠麻(36)組(NTT都市開発)は、ライバルに敗れて涙の銀メダルだった。

 パラリンピック連覇に向けた最後の壁は、やはり劉禹彤(りゅううとう)、尹夢璐(いんむろ)組(中国)との決勝だった。ずっと世界トップを争い続けてきた相手で、同じ顔合わせだった東京大会は勝利したものの、その後は国際大会でなかなか勝てなかった。

 特に、障害が比較的軽い劉への苦手意識が強くなり、尹を狙うことでおのずと攻撃の幅が狭まっていた。昨秋のアジアパラ大会もストレート負けで、試合後は里見が悔し涙を流した。パリ大会に入っても差が埋まらず、予選で一度は敗れた。

 それでも、決勝は絶対に負けられない理由があった。山崎は、近く一線から退く考えを里見に伝えていた。

 10歳の年齢差がある2人は、ともに交通事故で脊髄(せきずい)を損傷し、両脚に障害が残って車いす生活になった。先輩として実績を重ねていた山崎に続き、里見が新星として台頭した。

 ともに世界トップクラスの2人がペアを組むのは、自然な流れだった。2018年の結成以来「ユマサリ」の愛称で親しまれ、その名を広めた。

 2人で挑む最後の大舞台は、出だしから4ポイント連取されたが、最大51回(69秒)続いたラリーの応酬に真正面から受けて立った。粘りの姿勢を最後まで貫いたが、最後はやはり相手が一枚上手だった。

 試合後、山崎は「自分のミスが目立った」と責任を背負ったが、里見はそう思っていない。

 相手にマッチポイントを握られ、迎えた最後のプレーだった。懸命にシャトルを追う里見が前に誘い出されたところを、山崎がコート後方に回り込んで何とかしのいだ。

 2人の車いすが接触し、結局は相手にポイントを奪われて敗戦が決まったが、里見は試合後に「(自分をカバーしてくれた)悠麻さんの気持ちが伝わってきた」と涙を流した。

 「悔しい」と口をそろえながらも、予選に比べて点差が縮まり「できることはやった」(山崎)と潔かった。メダルの色は変わったが、最後まで互いを信じてコートで戦い抜いた時間は、決して色あせない。【パリ川村咲平】

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