競泳女子100メートル平泳ぎ(運動機能障害SB8)決勝、7位となった福田果音(右)と言葉を交わす5位の宇津木美都=ラデファンス・アリーナで2024年8月30日、玉城達郎撮影

パリ・パラリンピック 競泳女子100メートル平泳ぎ(運動機能障害SB8) 決勝(30日、ラデファンス・アリーナ)

宇津木美都選手(21)=大体大 5位

 宇津木美都選手(21)=大体大=は、決勝レースを泳ぎ切った直後、プール脇のベンチに座り込んだ。持てる力を出し切って「死にそうだった」が、笑顔がはじけた瞬間があった。目の前には、ともに日の丸を背負い、同じように力を尽くした最高のライバルがいた。

 生まれつき右腕の肘から先がなかった宇津木選手は、3歳で始めた水泳にのめり込んだ。中学生から健常者の大会と並行してパラ競泳も参加すると、いきなり平泳ぎでアジア記録を更新した。高校時代は不調に悩んだ。しかし、大学で復活し、パラリンピック初出場だった2021年の東京大会は6位だった。

 そんな宇津木選手の競技人生を語る上で、欠かせない存在が同じSB8クラスで4学年後輩の福田果音選手(18)=KSGときわ曽根=だ。先天性の左前腕の欠損で、水泳は7歳から始めた。昨秋のアジアパラ大会は、100メートル平泳ぎで金メダル。一時は宇津木選手を押しのけて、日本記録保持者になった。

 宇津木選手にとって福田選手は「負けたら悔しいし、勝ったらうれしい。一緒に泳ぐのが、めっちゃ楽しみ」。休日には2人で食べ歩きやカラオケに出かけ、遠征の時は同部屋になると、互いの作戦について意見交換するほど、本音を言い合える。パリ大会の選手村でも、一緒にトランプをしてリフレッシュしている。

 競争心はもちろんある。だが、互いを思い合うライバルだからこそ「2人で競ってタイムを伸ばして、2人でメダルを取りたい」(福田選手)のが本音だ。今春の選考会では、直接対決を制して一足先にパリ切符を確実にした宇津木選手が、泣き崩れる福田選手をなぐさめる一幕があった。

 その後、福田選手も代表入りが決まり、2人で迎える初めてのパラリンピックだった。

 「一緒に決勝に行こう」と約束した通り、見事にそろって予選を突破した。決勝は、「最後はタッチまで頑張ると決めて泳いだ」と、後半で巻き返し先着した宇津木選手が5位に入り、福田選手は7位だった。

 目指していたメダルには届かなかったが、力を尽くした2人の表情は晴れやかだった。宇津木選手は「果音(福田選手)が(レースを)楽しめたならよかったな。また部屋で話したい」。若い2人の絆が、お互いをさらに成長させてくれる。【川村咲平】

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