【仙台商-中京】力投する仙台商の佐々木=兵庫県明石市の明石トーカロ球場で2024年8月30日、西村剛撮影

 第69回全国高校軟式野球選手権大会は30日の決勝で、初優勝を目指した仙台商(東東北・宮城)は中京(東海・岐阜)に0―2で敗れた。3連覇を遂げた王者相手に最後まで食い下がったチームを引っ張ったのが、背番号1を背負う佐々木大輔主将(3年)だ。硬式野球部に入部しながら軟式に転部し、悩むこともあったが「軟式をやってきて良かった」と振り返った。

 宮城県石巻市雄勝町の出身。4歳で東日本大震災に遭い自宅は津波で全壊し、母弘江さん(当時42歳)は行方不明のままだ。

誘ってくれた仲間

 佐々木主将にとって、小学3年から始めた野球は大切な存在だ。地元チームに加わり父勇人さん(64)とのキャッチボールも日課に。仙台市に隣接する富谷市へ転居後も野球を続け「公立校で甲子園に行くため」(勇人さん)に仙台商へ。合格が分かるとすぐに硬式グラブを購入し迷わず硬式野球部に入った。しかし、入学前から硬式球でプレーしていた選手も多く、「実力差があった」(佐々木主将)と壁にぶつかる。そんな時に声を掛けてくれたのが軟式の仲間だった。

 「1年上の代(先輩)が3人しかいないからと誘われて。悩んだけど1カ月か2カ月後に(転部を)決めた」。元々軟式球に親しんできたが、「硬式より点が入らない。それだけに守りが大切」と練習を重ねた。

チームの原動力に

 今春の宮城大会で、全国制覇の経験もある仙台育英相手に無安打無得点試合を達成するまでに成長した。

 しかし、少しだけ後悔もあった。「あそこで自分も活躍できていれば」と思ったのが硬式の仙台商が4強入りした今夏の宮城大会だった。最後は敗れたが、甲子園に出場した聖和学園と戦った準決勝で5点差を粘って追い付くなど躍動していた。

 硬式部員たちに複雑な思いを抱きながら、チームでは左腕の楠本憲新選手(3年)とともに左右のエースとして活躍。宮城、東東北両大会を勝ち抜き、硬式は出られなかった全国大会へ。しかも、27年ぶりとなる決勝進出の原動力となった。

 こんなこともあった。今春の東北大会は地元・宮城県で軟式、硬式が同時開催され、硬式の仙台育英主将とともに選手宣誓を担った。だが、宣誓後に取材陣が取り囲んだのは仙台育英の主将。「メディアの方の差が大きくて」と硬式との差に苦笑いしたが、今大会は多くの記者に囲まれた。頂点には立てなかったが、「みんなで頑張って準優勝できた。後悔もあるけど、それを上回る喜びがあった」と笑顔で振り返っていた。【中田博維】

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