第106回全国高校野球選手権大会(23日)
決勝=関東一(東東京)―京都国際
京都国際の小牧憲継(のりつぐ)監督(41)は、ボランティアで指導していた20年近く前と変わらず今も部員から「小牧さん」と呼ばれる。理想像は「らしくない」監督だ。
「別に何でもいいんちゃう」
「コーチなのか若いお兄ちゃんなのか、この人は何なんやろうというのが始まりなのかもしれない」
小牧監督は京都国際に携わり始めた当時を振り返る。
京都成章で高校球児だった時、京都国際の前身である京都韓国学園の中学出身のチームメートがいた。それが縁で関西大卒業後、滋賀銀行で働きながら、休日に京都国際で野球部を指導する生活を送った。
2008年、監督に就任した。「小牧さん」と呼び方を変えない部員に対し、コーチが怒ったこともあった。だが、小牧監督は「別に何でもいいんちゃう」と軽快に笑い飛ばしたという。
部員とフランクにコミュニケーションを取るのには理由がある。「最低限の礼儀ができていれば、あとは野球に集中させてやりたい」。選手が勝負するのは監督ではなく対戦相手と考え、一人でも多くの選手に上のステージでも野球を続けてほしいと願う。だから、必要以上の上下関係は好まない。
「僕は頑張っている子が好き」
小牧監督は1999年、京都成章に入学した。その前年夏の甲子園で、京都成章は松坂大輔さんを擁する横浜(神奈川)にノーヒット・ノーラン(無安打無得点試合)で敗れたものの、準優勝を果たした。小牧監督も甲子園を目指し、下級生の時から内野のレギュラーを勝ち取った。だが、選手として聖地には立てなかった。
その後はプロを志したが、けがが続いて「現実的には無理かな」と悟った。いずれは高校野球に携わりたいと思い、大学時代に教員免許を取得し、今は社会科教諭として勤める。
「コーチなのか若いお兄ちゃんなのか」と定まらなかった時代から20年近くが過ぎた。現在は学校の敷地内にある野球部の寮に家族で暮らし、小学3年生の長男と5歳の四つ子の5児の父でもある。「年を取って、(選手の)おやじ代わりであり、兄貴代わりであり、いろんな役割を演じないといけない」。多忙な日々を送りながら、選手らと向き合ってきた。
2021年春、監督として甲子園に初出場した。新型コロナウイルス禍でさまざまな感染対策が取られた中で開催されたが、太陽に照らされた聖地のまぶしさに思わず胸が躍った。
夢を追いかける選手を一番近くでサポートできることが監督業の最大の魅力と感じている。「野球というか、僕は頑張っている子が好き。甲子園のベンチで、間近で頑張っている子の姿を見せてもらえる。本当に幸せ」
この上ない「特等席」で一番長い夏を堪能する。【下河辺果歩】
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