第106回全国高校野球選手権大会は21日に準決勝があり、青森山田は2―3で京都国際に敗れ、初の決勝進出は果たせなかった。試合は一回、原田純希(あつき)選手(3年)の適時打と吉川勇大選手(3年)の犠飛で2点を先取。先発の下山大昂(だいこう)投手(2年)が五回まで無失点と粘投したが、投手交代直後の六回の3失点が響き、打線も援護できなかった。青森勢としては、1969年の三沢、2011年と12年の光星学院(現八戸学院光星)に続いての決勝進出はならなかった。

 (21日、第106回全国高校野球選手権大会準決勝 青森山田2-3京都国際)

 エースの数㍉のずれが、明暗を分けた。

 青森山田の関浩一郎投手(3年)は「チーム史上、最高のエース」とたたえられる。最速152㌔の直球を武器に、スライダーやカットボールをまぜ、打者を翻弄(ほんろう)してきた。

 「絶対の自信がある」という速球の威力、変化球の切れ、コントロールの正確さ。どれをとってもすばらしい。

 秘密は、リリースポイントにある。どの球種でも、寸分たがわぬ位置から投げ出されるのだ。打者から見れば、直球と同じ出どころから来た球が、手元で変化する。だから、的が絞れない。味方のベンチでさえ、球種は判断できないという。

 そのポイントがわずかに狂った。救援した直後の六回、1死満塁に追い込まれたときだ。

 いつもと違い、変化球のリリースポイントが数㍉、後ろになったようだ。ミリ単位のずれは、本塁までの18・44㍍の間に拡大して、失投になる。このときは甘く入った。

 さすがのエースも、甲子園の魔物に襲われたのか。何を投げたのかは「覚えていない」と言う。ベンチからはチェンジアップに見えた。右前に同点の2点適時打を許し、直後の投ゴロの間に勝ち越された。

 相手は鋭いスイングで圧力をかけていた。「変化球で逃げようとしたのが一番の反省。ベストの投球ができなかったのが悔しい」と涙した。

 大学に進み、プロになることを思い描く。「関が投げたら勝てる。そう信頼される投手になれるように頑張ります」

 変化球でかわす投手が多いなか、直球で真っ向勝負を挑んできた姿は、あっぱれだった。惜敗を糧に、青森の大エースはさらに羽ばたいてゆくだろう。(渡部耕平)

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 青森市の青森山田高校では、女子バドミントン部員や卒業生ら、約50人がスクリーンに映し出された中継に見入った。

 六回表、逆転の3点目を奪われると、生徒たちからは「あーっ」とため息。流れを変えようと、配られた赤いメガホンをたたいて応援したが、及ばなかった。

 女子バドミントン部主将の横内美音さん(18)は「中学から一緒にやってきた人もいたので、優勝してほしかった。たのもしい姿で戦ってくれた」。

 中学校野球部の後藤颯心さん(14)は「負けて泣き崩れていたのが印象的。必死にやっている姿をみせてもらった」と話していた。

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