(19日、第106回全国高校野球選手権大会準々決勝 智弁学園0ー4京都国際)

 4点を追う九回表2死一塁、智弁学園の知花琉綺亜(3年)が打席に入った。最後まであきらめたくない。必死にくらいついたが、5球目、バットが空を切り三振。体の力が抜け、少しの間、目を閉じた。

 同じ三重県出身で2021年に準優勝した時の中心選手だった前川右京(現・阪神タイガース)にあこがれ、智弁学園に進学した。

 昨夏の甲子園は3回戦で敗れ、先発メンバーとして活躍した知花が主将を任された。小坂将商監督は20年近いキャリアの中で、このチームを「今までで一番まとまりがいい」と評し、その大きな要因が「知花の人柄」だったと語る。

 この日は2安打を放ち、盗塁も決めた。ユニホームはいつものように真っ黒。4点目を奪われなお七回裏2死二塁の場面では、マウンド上の田中謙心(2年)のもとに駆け寄り、「ここはお前が三振取りにいけよ」と声をかけ、軽く背中をたたいた。田中はその言葉通り三振を奪い、ピンチを切り抜けた。

 昨夏を超えて3年ぶりに8強入りを果たしたが、合言葉だった日本一には届かなかった。「頼りないキャプテンやったけど、誰一人文句を言わず、ついてきてくれて、本当にいい仲間だった。(後輩には)春も夏も日本一を取ってほしい」。そう涙をぬぐった。(佐藤道隆)

ピンチに登板、自分を信じ全力 浅井

 三回裏1死二、三塁のピンチに、浅井晴翔(3年)が2番手投手としてマウンドに立った。小坂将商監督からは「思い切って今までやってきたことを信じて楽しんでこい」と、背中を押してもらった。

 この試合、1年の杉本真滉が奈良大会から通じて初めて登板し、奮闘していた。「後輩が頑張ってくれた。何としても自分が抑えないと」。そう気合を入れた。2死満塁になったものの、相手の4番打者を3球三振に切って取り、無失点で切り抜けた。

 だが、四回に相手打線につかまった。「空振りしないし、追い込んでもついてくる。相手の方が明らかに上だった」

 同学年で同じ左腕の田近楓雅と刺激し合ってきた。「あいつがいたから自分もここまで練習できた。失点は悔しいが、ここまでやってきたことに悔いはない」。かみしめるように話した。(佐藤道隆)

 ●佐坂悠登副将(智弁学園) 「最後の最後まで全員が『佐坂に回せ』と言ってくれて、本当に仲間に感謝です。自分がやってきた練習に悔いはない」

 ●田近楓雅投手(智弁学園) 「目標は日本一だったんですけど、みんなで野球ができて日本一以上にいいものが見られた。本当にここまで来られてよかった」

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