(19日、第106回全国高校野球選手権大会準々決勝 関東第一2―1東海大相模)
畠中鉄心(てつしん)(3年)が短いイニングを投げ、エース坂井遼(はる)(同)がロングリリーフする――。今大会、関東第一が勝ち上がってきた継投パターンがこの日、大きく違った。畠中自身の力で変えた。
先発マウンドに上がった畠中は立ち上がりから、東海大相模の強力打線にひるむことなく、向かっていく。「助けてくれた坂井、チームの仲間を今度は自分が助けたい」。三回まで連続で三者凡退に抑えた。
今大会、畠中の投球は不安定だった。この日と同様、先発した初戦は3回1失点で降板。継投した明徳義塾(高知)戦も2回2失点でマウンドを譲った。「勝とうという気持ちで焦りが出て、球がうわずった」。米沢貴光監督は「大会を通じて、調子が上がってこなかった。もっと自信を持って投げてほしい」と感じていた。
だが、優勝候補との準々決勝、米沢監督に「楽しめよ」とマウンドに送り出された畠中は見違える投球をみせた。投球回数が、今大会初めて3回を越えても崩れなかった。
東海大相模のこれまでの戦いから、「高めの球を打ってくる」とみて、低めに集めることを意識。四回以降も緩急をつけながらコースをついた直球で、打たせて取った。
五回終了時、米沢監督に九回まで投げるよう言われた。相手エース藤田琉生(同)も好投していた。「やってやる」。自分を鼓舞する一方、中盤以降は変化球を増やして打者のタイミングをずらし、スコアボードに0を並べた。八回までわずか2安打に抑え、得点圏にすら走者を進めさせなかった。
九回、「気持ちで行け、頼んだぞ」と坂井にマウンドを譲った。ベンチに向かうと、球場からは拍手が送られた。試合後、坂井はこう話した。「甲子園はいかに楽しめるかどうか」。準決勝を前に、これまで振るわなかった投手の二枚看板の一人が、自信を取り戻した。(西田有里)
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