パリ五輪から帰国した細谷真大選手=千葉県柏市で2024年8月9日、高野裕士撮影

 「細谷の1ミリ」――。サッカー男子U23(23歳以下)日本代表のパリ・オリンピックでの戦いは、このように表現されたFW細谷真大選手(22)=J1柏レイソル=の「幻のゴール」がハイライトの一つとなった。目標のメダルには届かなかったが、その戦いから細谷選手が得たものは。

 「すごく自分自身も楽しかった。約2年半、オリンピックと自分の成長のために戦ってきた。最後まで(U23代表の)皆と一緒にできて良かった」

 パリ五輪から帰国後の9日、千葉県柏市での取材にそう答えた。

 「通用した部分と、通用しなかった部分がある。フィジカルとポストプレーはうまくいったと思う。あとはスペイン戦でも出たけど、(ゴールを)決めきるところは今後も続けていく必要がある」

 そんな手応えと課題は「幻のゴール」にも詰まっていた。1次リーグを3戦全勝で突破し、2日(日本時間3日)に迎えた準々決勝のスペイン戦。0―1でリードされた前半、ペナルティーエリア内で相手選手を背負いながらパスを受け、振り向きざまのシュートでゴールネットを揺らした。

 スペインの選手も失点を認めて肩を落とす中、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が介入し、ゴールが取り消された。パスを受ける際、細谷選手の右かかとがオフサイドラインをわずかに越えていたとの判定だった。

 「試合中は(ゴールを取り消された理由が)何だか分からなかった。だけど(映像を)見直した時、やっぱり出ちゃっているものは出ちゃっていた。悔しいけど、認めるしかない」

 2022年ワールドカップ(W杯)カタール大会の1次リーグ第3戦。日本がスペインと対戦した際、三笘薫選手(27)がゴールラインを割りかけたボールをギリギリで折り返し、決勝点を演出したシーンは「三笘の1ミリ」と呼ばれた。

取材でパリ五輪を振り返る細谷真大選手=千葉県柏市で2024年8月9日、高野裕士撮影

 日本に歓喜をもたらした場面とは対照的に、悲劇的なシーンとして「細谷の1ミリ」という言葉が広まった。だが本人に引きずる様子はなく、そこで得た手応えを前向きに捉える。

 「あのシーンは自分の好きな形。悔しいけど、それをリーグ戦でも続けていけたら良い。(相手選手を背負ってのプレーは)Jリーグの方が若干やりづらさがある。あまりJリーグでは(寄せに)来ない印象があるので。海外の選手はグッと来てくれるので、それに対して体を張れる。感覚的には(五輪の方が)やりやすかった」

 そんなパリ五輪のスペイン戦では、元日本代表の本田圭佑選手(38)のX(ツイッター)でのつぶやきが話題となった。

 「ほそやさん? どこのチーム? めちゃいいやん」

 日本のカリスマ的存在だった選手の言葉を、細谷選手はこう受け止めている。

 「やっと覚えられたと思っている。(今まで)あまり認識されていなかったと思うので。まず一歩、出たのかなと思う。ここから継続的に頑張りたい」

 パリ五輪では全4試合に出場し、1次リーグ第3戦のイスラエル戦では決勝点を決めた。初戦のパラグアイ戦では、守備に行こうとする相手DFの進路を体を張ってふさぎ、MF三戸舜介選手(21)の先制点をお膳立てしたシーンが「細谷のブロック」と話題になった。自身でも「(自分に関する)いろいろなキーワードが出ていた」と振り返る大舞台だった。【構成・高野裕士】

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