【智弁学園-健大高崎】九回表智弁学園2死一、二塁、佐坂が適時打を放つ=阪神甲子園球場で2024年8月14日、山崎一輝撮影

高校野球・夏の甲子園2回戦(14日)

○智弁学園(奈良)2―1健大高崎(群馬)●

 序盤に互いに1点を奪うも、三回以降は両者一歩も譲らず、スコアボードには「0」が並ぶ。けりをつけたのは頼みのリードオフマンだった。

 チャンスはついえたかに見えた。九回1死一、二塁。智弁学園の送りバントは相手捕手の好守に阻まれて失敗。直後に打席に入った佐坂悠登(はると)は「初球から思い切り振っていくつもりだった」。その言葉通り、初球の真ん中に甘く入った変化球を中前にはじき返した。

 佐坂には「絶対打てる」との確信があった。マウンドにいたのは、五回途中に登板した健大高崎の石垣元気。2年生ながら150キロを超える直球と多彩な変化球を操る投手だ。

 この日は4打席を終えて無安打と振るわなかったが、石垣と対戦した七回の第4打席は「ボールがよく見えた」。結果は二ゴロだったが、手応えがあった。「対応できない速球は見逃してしまうことが多いが、150キロの直球にもファウルやゴロでバットに当てられた。これ以上の直球が無ければ次は対応できる」

 緊迫した場面でも、相手と自分の力を比べて分析できる冷静さがあった。「佐坂でダメだったら割り切れる」と、小坂将商監督から一目置かれるだけのことはある。

 その佐坂は試合後、なぜか大粒の涙を流していた。今春の選抜大会出場を逃すなどチームは本来の力を出せずにいた。「監督から甲子園に行ける確率は5%と言われた。やるべきことが分からなくなってずっと苦しかった」

 だが、甲子園の初戦では岐阜城北との延長十一回の接戦を制し、さらに2回戦では選抜王者の健大高崎から勝利を挙げた。

 「日本一練習してきた自信があるので、負けるはずがないと一戦一戦臨んでいる」。涙を拭い、次戦を見据えた。【磯貝映奈】

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