練習で汗を流す伊東輝悦選手。後ろで中山雅史監督が見守っていた＝静岡県沼津市で（佐藤大撮影）
－練習を見させてもらいましたが、49歳の動きではない。どういう体のケアをされていますか。 伊東 特別そんなないですよ。必要あればトレーナーにちょっと足を触ってもらったりぐらいで。◆特別なことはない「適度なストレスで」
－食事に気をつけていらっしゃることはありますか。 伊東 いや特別にないですよ。一般的な健康に気をつけてます、ぐらい。 －お酒は飲まれますか。 伊東 もともと飲む方じゃないから。でも甘い物は食べる。ストレスが大敵だと思っているから。性格的にストイックにもできないところがある。適度なストレスで。かけすぎたら体もメンタルもぶっ壊れちゃうと思うから。 －若手選手に背中で見せようという思いはありますか。 伊東 言葉でというのはそんなに得意じゃない。どっちかというとプレーして、というタイプだとは思う。 －最近は試合出場の機会も限られてはいますが。 伊東 選手でいるから試合に出たいというのはあるけど、試合に出たい半分、でもチームにはもっと若い選手がいっぱいいて、可能性をもった選手がいるから、そういう選手がピッチで躍動しているのを見たいというのが半分。◆「おれはおれ ファイティングポーズはとるけど」
－若手に頑張ってほしいという気持ちですか。 伊東 おれはおれでやれる準備はするし、ファイティングポーズはとるけど。お互いに刺激し合って切磋琢磨（せっさたくま）して、強くなれればいい。若い選手にちょっと刺激を与えられたらいいなって思っている。でも間違いなく僕の方が若いやつらからエネルギーをもらっている。
練習で汗を流す伊東輝悦選手＝沼津市で（佐藤大撮影）
－「マイアミの奇跡」について若い選手から聞かれることはありますか。 伊東 別にないっすよ。若い人も分かんないでしょ、28年前だから。親から説明された子どもも何のことって顔で（笑）。そりゃそうだろうなって思うけど。 －そのときの経験を伝えたりとかすることはありますか。 伊東 経験も何も、僕はそのとき初めて世界大会に出て、ある意味よく分からなかった。今の子たちは試合も映像でいつでも見られるし。実際、プレーで海外に行く選手も圧倒的に増えた。僕よりよっぽど経験積んでいると思うし。何も言うこともないと思う。 －あのときの日本の熱狂ぶりはどうでしたか。 伊東 すごいなという感じも受けなかったよね。点は取ったけど、あのチームでそんなに目立つ方じゃなかったから。 －意外と冷静に見ていましたか。 伊東 そう。特別何もなかったから。でもそれはそれでよかったんかなって思うし。ちやほやされておかしくなる可能性もあるじゃないですか。そういうことにはならなかったから。◆「ちょっとだけの手応え、ちょっとだけの自信」
－だから今まで続けられたという部分もありますか。 伊東 それは分かんないけど、少なくともオリンピックで全然プレーできなかったというわけでもなかったから。ちょっとだけの手応え、ちょっとだけの自信みたいなものも、あの大会を通じて得たものあったと思うし。
練習で汗を流す伊東輝悦選手＝沼津市で（佐藤大撮影）
－何歳までプレーしたいということは考えますか。 伊東 全然考えてこなかった。1回だけ2年契約ってあったけど、ずっと1年だったし。もう分からない。先のことは全然分からない。◆「自由でいいんだよ」
－おじさん世代にとっては希望。エールをお願いします。 伊東 いや、別にエールも何もないというか、49、50までプレーさせてもらってすげー幸せだと思うし。でもある意味、非常識かもしれねえし、一般的に考えたら。でもそんなやつがいてもいいんじゃねえかな、とも思うし。面白えなとは思うから、なんかちょっとやっているところもある。自由でいいんだよ、みたいな。伊東輝悦（いとう・てるよし） 旧清水市（現静岡市清水区）出身。東海大第一高（現東海大静岡翔洋高）を経て、1993年に清水エスパルスに入団。「マイアミの奇跡」で一躍時の人になった。ヴァンフォーレ甲府、ブラウブリッツ秋田などを経て、2017年にアスルクラロ沼津に入団した。今年5月のサッカー天皇杯全日本選手権の県代表決定戦で1年ぶりに公式戦に出場した。
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