高校野球・夏の甲子園2回戦(12日)
○広陵(広島)2―1熊本工●
1点を追う七回、一打逆転の場面。1死二、三塁で打席を迎えた広陵のリードオフマンから力みがふっと消えた。「『打ってやろう』ではなく、『強い打球を打とう』と思った方がいい結果になる」。広陵の1番・浜本遥大(はると)選手が試合をひっくり返す貴重な一打を放った。
中盤まで試合の主導権は、熊本工にあった。広陵打線は相手のエース右腕・山本凌雅投手の低めに集めたスライダーを捉えられずにいた。六回まで得点圏に4度走者を置いたが、ホームが遠かった。それだけに七回の好機は是が非でも得点につなげたい場面だった。
七回の浜本選手の打席もやはりスライダーがポイントになった。初球の内角を突いたスライダーを見極めた後、再び懐を突いた直球を見逃してひらめいた。「外の変化球の誘い球だ」。狙い通り3球目に外角高めに浮いたスライダーを踏み込んで流し打った。右前への適時打で2者を還して一気に逆転。「ゼロが続いていたので、ほっとした」と振り返った。
冷静になれたのには、理由があった。山本投手の変化球への対策をしてきてはいたが、浜本選手は変化球に合わせるような打撃が目立っていたため、中井哲之監督は「変化球をあまり意識せず、甘い球を思い切っていけ」と伝えたという。浜本選手は「強引にならずに引きつけて打てた」と、基本に立ち返ったシンプルな思考が殊勲打につながった。
春夏通算52回の甲子園出場を誇る広陵だが、今大会から暑さ対策で広島大会までは黒だった帽子、ヘルメットやアンダーシャツなどを白に一新して臨んだ。大会前に決断した中井監督は春夏通算40勝に到達。「(色が)変わったからって、広陵は変わらない」と胸を張った。【吉川雄飛】
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