(11日、第106回全国高校野球選手権大会1回戦 大社3―1報徳学園)

 優勝候補といわれた強豪との試合前、大社の左腕エース馬庭優太投手(3年)は心に決めていた。「最初から全力でいって9回を投げきる」

 得意の外角に速球を投げ込み、変化球を絡めるいつもどおりの投球で、報徳学園打線をほんろう。六回まで被安打2に抑えた。

 味方が1点を追加した直後の七回裏。この日初めて先頭打者を安打で出すと、続く打者にも安打を許し、犠打で送られ1死二、三塁のピンチ。マウンドに内野陣が集まった。

 「気合だ。やるしかない」。仲間の励ましが「うれしかった」。代打を空振り三振に、次打者を中飛に打ち取った。

 高校入学以来2年半、馬庭投手は伸び悩みの時期が何度もあったという。

 何としても球速を上げたい。例えば、報徳学園のエース今朝丸裕喜投手(同)は最速151キロ。自身の最速140キロは全国レベルでは「並み」だ。それでも「1キロでも速く」と走り込みで下半身を強化してきた。

 球速とともに磨きをかけようと努力したのが変化球。いろいろな握り方を試し続けたが、曲がり始めるのが早かったり、腕の振りが速球と明らかに違ったり。打者は振らないし、簡単に打たれた。

 バッテリーを組む石原勇翔主将(同)や32年前の大社OBで同じく左腕エースだった大内秀則コーチらの助言も得つつ、投球フォームを改良するなど創意工夫し、あるとき「感覚」をつかむ。今では、石飛文太監督から「変幻自在の投球を兼ね備えた器用な投手」と評されるまでになった。

 この日、一塁側アルプス席には大応援団が陣取った。「大勢の前で緊張もしたけど、わくわくした」。チームの目標である「甲子園でベスト8」に向け、次戦も全力投球で臨む。(中川史)

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