【早稲田実-鳴門渦潮】二回表早稲田実2死満塁、宇野が3点二塁打を放つ=阪神甲子園球場で2024年8月11日、滝川大貴撮影

高校野球・夏の甲子園1回戦(11日)

○早稲田実(西東京)8―4鳴門渦潮(徳島)●

 高校野球では聞き慣れない乾いた打球音が響いた。滞空時間の長い飛球は左翼フェンスを直撃し、朝の甲子園がどよめきに包まれた。早稲田実の決勝点はプロ注目のスラッガー、宇野真仁朗の木製バットから放たれた。

 2点を先行された直後の二回。2死満塁の好機で右打席へ。3球で追い込まれたが、変化球をカットし、140キロ超の直球を見極めて甘い球を待った。

 フルカウントからの10球目。甘く入ったスライダーを強振し、走者一掃となる逆転の適時二塁打とした。「変化球に反応し、うまく前で捉えられたので結構飛ぶかなと思ったが、力が足りなかったですね」。今大会第1号本塁打まであと一歩の打球を、少し残念そうに振り返った。

 宇野は2番打者だがチームの主砲であり、主将も担う大黒柱だ。身長178センチと大柄でないが、高校通算64本塁打を誇る。木製バットを使うのは、今春から導入された低反発の金属バットより芯で捉えられる確率が高く、飛距離も遜色ないからだという。

 冬場の強化の一環で木製バットを使って練習し、春季大会でも使用すると結果がついてきた。今夏の西東京大会でも2本塁打を放っただけに説得力がある。

 宇野は殊勲打を含めて計3安打。相手の隙(すき)をつく走塁や堅実な遊撃の守備も披露し、走攻守にあふれるセンスを存分に見せつけた。ベテランの和泉実監督は「彼の一番の長所は走力」と評し、本人も「走塁も守備もできるのが自分の一番の強み。難しい初戦で自分のプレーができたので80点」と笑みを浮かべる。

 主将の一振りで主導権を握ったチームは計13安打を放ち、アルプス席からは早大伝統の応援歌「紺碧(こんぺき)の空」が何度も流れた。阪神甲子園球場が開場から100年を迎えた節目の大会。王貞治、荒木大輔、斎藤佑樹、清宮幸太郎ら記憶に刻まれる選手を輩出してきた伝統校で、宇野の躍動は新たなスター誕生を予感させた。【長宗拓弥】

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