陸上男子400メートルリレー決勝、5位となり肩を落としながら歩く第2走者のサニブラウン・ハキーム=フランス競技場で2024年8月9日、中川祐一撮影

陸上 男子400メートルリレー決勝(9日・フランス競技場)

日本=37秒78(5位)

 エースは期待通りの走りを見せたが、日本が再びメダルを獲得するにはピースが足りないことも思い知らされる結果となった。

 「どうでした? 自分の2走」

 レース後の取材エリア。質問に答えるより先に、サニブラウン・ハキームは報道陣に自らの走りの感想を尋ねた。

 前日の8日夜にオーダー変更が決まり、代表で初めてサニブラウンが2走を担うことになった。バトン合わせをしたのはレース前のウオーミングアップ。本番では、スタートダッシュが得意な1走・坂井隆一郎からのバトンパスの距離がやや詰まり気味になったが、かまわず加速した。

 サニブラウンはこの区間トップのタイムで3走・桐生祥秀につなぎ、アンカーの上山紘輝にバトンが渡るまで先頭争いを演じた。銀メダルに輝いた2016年リオデジャネイロ五輪以来、2大会ぶりのメダルは逃したが、エースらしく見せ場は作った。

 本来2走で固定されていたはずの21歳、柳田大輝が不振から抜け出せなかった。急きょの起用だったが、当のサニブラウンは「自分がやるしかないのは分かっていた」と不測の事態にも冷静に対応した。

 「2走・サニブラウン」は、リレー代表を率いる土江寛裕・日本陸連短距離ディレクターが22年世界選手権(米オレゴン州)の頃から温めていたアイデアだ。前半でリードを奪うためにサニブラウンの走力を買っての策だが、思わぬ形で日の目を見ることになった。

 土江氏にとって、柳田は東洋大で指導する選手だが、勝負を優先した。6月に追い風参考ながら100メートル9秒台をマークしたものの、最後まで本来の調子を取り戻せなかった。

 将来のエースが、大一番のレースに臨めない。土江氏は「パーソナルコーチとしては、本当はここ(決勝)を走らせたかった。次の(28年)ロサンゼルス五輪ではハキームのような立場で柳田を使えるようにしたい」と語るのが精いっぱいだった。

 サニブラウンも危機感を募らせる。リレーメンバーが替わっても、日本は受け渡しの技術を維持してきた。「『日本が(世界で)うまい方』と言っているだけではダメで、もっと完璧にしなければならない」。この日の決勝では自身も関わった1~2走、さらに3~4走の受け渡しでもわずかなロスが生まれた。少々のほころびでも命取りになることを、改めて感じさせるレースだった。【パリ岩壁峻】

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