陸上 男子400メートルリレー決勝(9日・フランス競技場)
日本=37秒78(5位)
エースは期待通りの走りを見せたが、日本が再びメダルを獲得するにはピースが足りないことも思い知らされる結果となった。
「どうでした? 自分の2走」
レース後の取材エリア。質問に答えるより先に、サニブラウン・ハキームは報道陣に自らの走りの感想を尋ねた。
前日の8日夜にオーダー変更が決まり、代表で初めてサニブラウンが2走を担うことになった。バトン合わせをしたのはレース前のウオーミングアップ。本番では、スタートダッシュが得意な1走・坂井隆一郎からのバトンパスの距離がやや詰まり気味になったが、かまわず加速した。
サニブラウンはこの区間トップのタイムで3走・桐生祥秀につなぎ、アンカーの上山紘輝にバトンが渡るまで先頭争いを演じた。銀メダルに輝いた2016年リオデジャネイロ五輪以来、2大会ぶりのメダルは逃したが、エースらしく見せ場は作った。
本来2走で固定されていたはずの21歳、柳田大輝が不振から抜け出せなかった。急きょの起用だったが、当のサニブラウンは「自分がやるしかないのは分かっていた」と不測の事態にも冷静に対応した。
「2走・サニブラウン」は、リレー代表を率いる土江寛裕・日本陸連短距離ディレクターが22年世界選手権(米オレゴン州)の頃から温めていたアイデアだ。前半でリードを奪うためにサニブラウンの走力を買っての策だが、思わぬ形で日の目を見ることになった。
土江氏にとって、柳田は東洋大で指導する選手だが、勝負を優先した。6月に追い風参考ながら100メートル9秒台をマークしたものの、最後まで本来の調子を取り戻せなかった。
将来のエースが、大一番のレースに臨めない。土江氏は「パーソナルコーチとしては、本当はここ(決勝)を走らせたかった。次の(28年)ロサンゼルス五輪ではハキームのような立場で柳田を使えるようにしたい」と語るのが精いっぱいだった。
サニブラウンも危機感を募らせる。リレーメンバーが替わっても、日本は受け渡しの技術を維持してきた。「『日本が(世界で)うまい方』と言っているだけではダメで、もっと完璧にしなければならない」。この日の決勝では自身も関わった1~2走、さらに3~4走の受け渡しでもわずかなロスが生まれた。少々のほころびでも命取りになることを、改めて感じさせるレースだった。【パリ岩壁峻】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。