アーティスティックスイミング・チーム・テクニカルルーティンでの日本代表の演技=アクアティクスセンターで2024年8月5日、和田大典撮影

 パリ・オリンピック第11日は5日、アーティスティックスイミング(AS)のチーム・テクニカルルーティン(TR)が行われ、日本は284・9017点で3位発進した。いったんは技の一つがミスと見なされ6位となったが、演技後の抗議によって取り消された。

 TRは「雷」をテーマに臨んだ日本。最後の脚技が事前の申告通りではないと最低評価の「ベースマーク」が与えられ、大幅減点となってしまった。

 しかし、演技後にコーチ陣が審判団に抗議。その結果、判断が覆り、得点が30点以上アップした。順位も中国、スペインに次ぐ3位まで上がった。

 コーチ陣によると、抗議を行うには一つの技につき500スイスフラン(約8万5000円)がかかる。抗議が認められると返金される仕組みだという。

 なぜこんな事態が起きたのか。

 背景には、ASの採点ルールが大きく変化したことがある。

 今回は採点ルールが変更されて初めての五輪となる。これまでは、芸術性や難易度などを100点満点で採点。ただ、根拠が分かりにくい上、それまでの実績による各国の「序列」がある程度でき上がってしまっていた。

 新しいルールでは、一つ一つの技に難易度(DD)が定められ、その出来栄えで技の得点を出す。そこに芸術性(アーティスティックインプレッション)の得点を加え、合計点とする。

 審判団は競技中、事前にチームが届け出た通りに技が行われているかチェックする。もし予定の要素が欠けたり、ミスをしたりすると、その要素に対して最低評価の「ベースマーク」が与えられる。このベースマークの有無が、全体の得点を大きく左右する。

 つまり、高得点のためには、これまでより格段に技の正確性が求められるようになった。一つのベースマークで得点は大幅に下がるため、順位変動もより起こりやすくなった。

 ファンは予測不可能な試合展開を楽しめる半面、「メダルのためにはベースマークは一つも許されないくらい」(強化関係者)というほどシビアになった。

 6日のフリールーティン、7日のアクロバティックルーティンも、一つのミスが勝敗に関わる緊張感のある試合が続きそうだ。【パリ深野麟之介】

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