第106回全国高校野球選手権大会に出場する、早稲田実の川上真(しん)選手(2年)は甲子園がある兵庫出身だ。試合に備えて練習した兵庫の高校のグラウンドで、野球を始めるきっかけを作った親友と偶然の再会を果たした。
5日、早稲田実が大会本部にこの日の練習グラウンドとして指定された明石高校(兵庫県明石市)。到着したバスから、川上選手が降りると、1人の高校生が話しかけてきた。「体、でかなったな」。声をかけたのは同校の津崎優和君(2年)。小学生の時の親友だ。
西東京大会決勝のマウンドにもあがった今大会背番号12の川上選手は明石市の隣、播磨町の出身。小学生の頃、サッカー少年だったが津崎君によって野球少年にかわった。
小学3年の秋、津崎君が学校のグラウンドで家族からノックを受けていると、同じクラスで仲の良かった川上選手が通りかかった。一緒にノックを受けると津崎君は、川上選手のボールさばきのうまさに驚いた。「同じチームでやらへん?」
誘いに乗り、川上選手は津崎君と同じ少年野球チームに。すると、あっという間に中心選手になった。川上選手はその後、硬式の強豪チームに、津崎君は中学の軟式の野球部に進んだ。
高校進学時、「勉強も野球もがんばれる環境を」と川上選手は地元を離れ、早稲田実へ。別れの日、川上選手は津崎君からこうつづられた手紙をもらった。「甲子園行ってくれよ」
それ以来、2人は会えていなかった。だから、その願いをかなえ、割り当てられた最初の練習場が明石高校と知って川上選手は驚いた。
5日は、甲子園入りしてから初めての本格的な練習。ノックやマシンを使った打撃練習に打ち込んだ。津崎君と言葉を交わせたのはほんのわずかな時間だったが、初戦を前に、「会えてうれしかった」。
津崎君も練習の合間に伝えられなかった分、「頑張れよ」とメッセージを送るつもりだ。中学時代、誰よりも貪欲(どんよく)に野球に打ち込んでいた川上選手の姿を、津崎君は最近よく思い出すという。「優勝して欲しいな」。そう、期待に胸をふくらませている。(西田有里)
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