陸上男子100メートル決勝を制して「ドラゴンボール」のカメハメ波ポーズをする米国のノア・ライルズ=フランス競技場で2024年8月4日、中川祐一撮影

パリ・オリンピック陸上男子100メートル決勝(4日)

ノア・ライルズ(米国)=金メダル、9秒79

0・005秒差で決着

 当代きってのスプリンター対決を自己ベストで制すと、ノア・ライルズは鳥山明さん(3月に死去)の人気漫画・ドラゴンボールで主人公の孫悟空が繰り出す「かめはめ波」のポーズを披露した。

 日本の漫画を愛するライルズおなじみのパフォーマンスだ。男子100メートルで初の「天下一」になったが、フィニッシュの瞬間は金メダルを確信できなかったという。

 この種目で2023年世界選手権優勝の自身に加え、22年王者のフレッド・カーリー(米国)、さらに東京オリンピック金メダルのラモントマルチェル・ヤコブス(イタリア)らがひしめいた決勝は、最終的にライルズとキシェーン・トンプソン(ジャマイカ)がほぼ同着したように見えた。

 「正直に言うと、君の勝ちだと思うよ」

 ライルズはフィニッシュ直後、トンプソンに声をかけたという。しかし、写真判定の結果はライルズが先着したことを示していた。ライルズ9秒784、トンプソン9秒789。0・005秒差での勝利に、「『ああ、僕はすごいんだ』と思った」。

 米国勢の男子100メートルでの五輪金メダル獲得は、04年アテネ大会のジャスティン・ガトリン以来。陸上大国に久々の最速王者が誕生した。

 200メートルで東京五輪銅メダルの実績を持つ27歳は、短距離で全米トップクラスの実力を誇った両親から生まれた陸上の申し子だ。23年世界選手権では100メートル、200メートル、400メートルリレーの3冠を達成した。

 強さを誇示すると同時に、自分の弱さと向き合える選手でもある。かつては新型コロナウイルスへのストレスや遠征に伴うホームシックなどの影響で、うつ病になったことも。自身のメンタルの状況については、隠さずに公言している。「(心の問題を)共有するのは難しいこととは感じていない」。大事なのは孤立しないことだと考えている。

 五輪会場のフランス競技場は、紫色のトラックが特徴的だ。「僕の好きな色。このスタジアムは、僕のために作られたんだと思う」。そう語るライルズは男子400メートルリレーにも出場予定。2大会ぶりのメダルを目指す日本にとって、厄介な相手だ。【パリ岩壁峻】

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