パリ・オリンピック第8日は2日、バドミントンの混合ダブルス3位決定戦が行われ、東京五輪銅メダルの渡辺勇大選手(27)、東野有紗選手(28)=いずれもBIPROGY=の「ワタガシ」ペアが韓国ペアに勝利し、2大会連続の銅メダルを獲得した。バドミントンでは、2大会連続のメダル獲得は日本勢として初めて。
勝利が決まると、東野選手はあおむけに、渡辺選手は膝をついて両拳を強く握りしめた後、うつぶせにコートに倒れ込んだ。約10秒間。快挙をたたえる会場の大歓声を、対照的な姿で全身で味わっていた。
「3位決定戦は(初めましてではなく)『二度目まして』なので。もっと上に行きたかったですけど、3年前もあれだけ苦しい試合はないと思うくらいの試合ができたので、自信を持ってプレーできた。勝ててホッとしました」。前日の敗戦後は伏し目がちだった渡辺選手は、いつも通り冗舌に語ってみせた。
悔しい敗戦から約17時間半。再びコートに姿を見せた「ワタガシ」からは闘志がにじみ出ていた。フィジカル勝負の長いラリーにも屈することなく、耐え続けて勝利をつかんだ。
だが、すぐに気持ちを切り替えられたという渡辺選手に対し、東野選手は「その日のうちに勇大君と『切り替えよう』と話してはいたが、準決勝のことを考えてしまう時間が多く、やっぱり夜は寝られなかった」という。
決戦の朝。目にした渡辺選手の表情からは覚悟を感じ取った。その顔を見て「自分も切り替えなきゃと思いました」。ペアを組んで13年目。言葉以上に伝わるものがあった。
ワタガシは常々「混合ダブルスを広めたい、価値を高めたい」と口にする。2人の活躍で注目が集まってはいるが、女子ダブルスなどと比較すると、混合ダブルスはまだまだ日本の中ではマイナーだ。
その理由は実業団のシステムにある。混合ダブルスを担当する日本代表のジェレミー・ガン・コーチも「日本の実業団は男子だけ、もしくは女子だけのチームしかないところも多く、相性が良くてもペアリングができないことが課題だった」と話す。
そのシステムは今も残るが、2人が成し遂げた日本勢初の快挙は、風向きを変える可能性を大いに持っている。渡辺選手は「少しでもミックスダブルスが、バドミントン界全体が盛り上がってくれればという気持ちでいます。そのためにも、僕ら選手は結果を残すことが一番大事」。視野は広い。
「五輪メダリスト」として注目され、期待されながら戦い抜いた3年間。激闘を終えた直後に「この先」について問われると、渡辺選手は「休ましてくれー」と報道陣を笑わせ、東野選手も笑顔でうなずいていた。偽らざる本音だろう。それでも、2人はまた強い決意でコートに立っているはずだ。【パリ玉井滉大】
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