体操女子団体決勝、最終種目の床運動を終え笑顔を見せるシモーン・バイルス=ベルシー・アリーナで2024年7月30日、玉城達郎撮影

 「女王」が五輪の舞台で復活を見せつけた。パリ・オリンピック第5日は30日、ベルシー・アリーナで体操の女子団体総合決勝が行われ、米国が優勝した。米国のシモーン・バイルスは圧倒的な演技を見せ、会場を魅了した。試合後は「いまは経験を積んでここにいる。とても楽しむことができた」と語り、金メダルを手に晴れやかな笑顔を見せた。

 その経歴は輝かしい。体操を始めたのは6歳の時。保育園で連れて行かれた体操クラブで選手のマネをしているのを見つけたコーチが才能に気付き、両親に体操を習わせるよう依頼する手紙を送ったのがきっかけだ。

体操女子団体決勝、シモーン・バイルスの平均台=ベルシー・アリーナで2024年7月30日、玉城達郎撮影

 2012年に代表チーム入りして以降、数々の大会で優勝を重ねた。世界選手権ではこれまでに23個の金メダルを獲得。五輪では16年のリオデジャネイロ五輪で初出場ながら四つの金メダルを手にした。

 だが、苦境もあった。3年前の東京五輪だ。団体総合決勝で最初の跳馬を終えた後、2種目め以降を棄権した。後に「今回の五輪は非常にストレスが多かった。以前のように自分を信じられない。楽しめていない」と語り、「精神的ストレス」が原因だったと明かした。新型コロナウイルスの感染拡大で大会が1年延期されたうえ、無観客で開催された異様な五輪は、トップアスリートに大きな負担を強いていた。

 その後、しばらく競技を離れた。その間、専門家のセラピーを受けたおかげで回復し、22年に練習を再開。その間にプロのアメリカンフットボール選手の夫とも結婚し、私生活も変化した。

 28日の予選ではウオーミングアップの最中に左ふくらはぎをひねったが、その後も演技を続けて首位で予選を通過。決勝でも大技を決め、会場を沸かせた。

 多くのメダルを手にし、体操の歴史に名を刻み続けるバイルス。それでも、その言葉に気負いはない。「私は自分が好きなことをやって楽しんでいるだけ。それが私にとっていちばん重要だから」【金子淳】

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